第18章 楽園事件:9
本来は本人が考えるべきことだが彼女の場合はある程度示さなければ決められない。だが宜野座はそれもいつかは直さなければいけないと考えている。
「彼女に決めてもらおう。取り敢えず一つずつ絞ってどちらが良いか聞いてみよう。」
「分かりました。一応学生から上がって間もないのは私と霜月監視官なので、相談しながら決めますね。」
「悪いな、監視官。おじさんの時代とは違うかもしれないからな。」
「あ、そういう意味じゃないですよ!」
「ハハッ!いいんだ。分かってるよ。」
「もう、宜野座さん。いつから人をからかうようになったんですか。」
確かに監視官の時にはこのほんの少しふざけることができなかった。なんせ後半はいつもイライラしていたのは自覚もある。
「いろいろあれば人も変わるさ。もきっと。」
「そうですね。じゃあ、また明日。」
「あぁ、お疲れ様。」
通信を切ると静かな部屋に戻される。そういえばシャワーの音が聞こえない。
「私も…なんですか?」
「っ!」
背後からの声に驚き振り向く。全く気配に気が付かなかった。は頭にタオルを乗せてその上から手でゴシゴシと髪を拭いている。常守からのお下がりの部屋着を着ていた。ショートパンツに肩の出るトップス。露出が多い。
「なんだ、上がってたのか。」
「私も…なんですか?」
もう一度聞かれる。それはどこか怒ったような声にも聞こえた。なぜだかその答えを言ってはさらに怒らせるのではないかと思ってしまう。だが隠しても仕方がない。
「もきっと社会に出ると、変わるだろうなって。常守と話していた。」
は無表情というよりやや強張らせて黙っていた。それが妙な威圧感を生んでいる。
「そうですか。」
それだけ言うと脱衣所に引き返していった。ドライヤーの風の音が聞こえる。彼女の返事が納得したのかそうではないのか、とても分かりにくい。宜野座は追うようにして脱衣所に入ると風の音が止まる。鏡越しに目があった。
「なあ、。俺たちはこの街でお前が生活できるように準備をしている。でもお前には翼があるだろう?だから、その。」
言いにくそうにしているとが代わって口を開く。
「人でいるか、動物でいるかを決めろってことですか?」
「いや、決めろって言うわけじゃ…」