第3章 File:3
「。この手術はなんのためにされたんだ?」
「わからない。」
合意の上の手術じゃないとしたら大問題だ。
だが詳細に聞けば合意がないとも言えないらしい。
はよく覚えていないが担当医からは「体に良くないところがあるからお母さんから預かった。」と言われ育ったらそうだ。詰まるところ人身売買だなと真流は言った。廃棄区画内では特段不思議でもないという。行き場を失った浮浪者の巣窟では未だ現金制度で成り立っている。電子マネーがメインの表社会と違い現金がものを言うため子供を売ってお金に変えるのだという。
「私…売られたの?」
が初めて不安を表情に見せたので狡噛はその背を撫でた。何よりまた暴れだされても困る。
真流はここで言うべきではなかったかとも思ったが本人に問われれば今更隠すこともできない。
残念だがそうだろうと言うしかなかった。
「さっき言ってた六花っていうのは?」
狡噛はすかさず話を振る。
「妹です。多分。」
売られてきたと言われて自分の記憶も怪しく思えてきたらしい。物心ついた時に六花はいた。だが母のことをは覚えていない。血の繋がった妹かどうかを証明するものはない。
だが姉妹は高く売れる。特に実験台としたときに遺伝子が同じだと役に立つという。
真流の話を聞いているうちには背中の異変を感じて掻き始めた。
六花を思うと反応してしまう。落ち着かなければと思うほど焦り、羽根は刺激するほど生えてくる。
「狡噛さん、また…」
は狡噛に訴えかけ、狡噛も異変を感じ取り一旦話はここまでとした。
真流は詳しい分析結果が出たら報告すると言った。
廃棄区画内の事件は見て見ぬふりするのが暗黙の了解となっている以上、他の案件より結果は遅いだろう。
狡噛とは三係の執務室へ戻った。
そこには和久しかいなかった。
「お帰りなさい。」
「只今戻りました。天利と昏田は?」
「二人ともトレーニングルームです。」
仕事の合間を縫って執行官と監視官はトレーニングで体を鍛える。
「じゃあ俺も行きます。、おいで。」
は何も言わず後を着いていった。
雛鳥が親鳥の後を追うような姿に和久は密かに微笑んだ。