第3章 File:3
暗い部屋をディスプレイのライトだけがぼんやりと照らす。
分析官の真流は新人監視官の内密な依頼内容に興味を示していた。
「これ本物か?」
「ああ…多分。」
人の身体から出てきた羽根を本物と言っていいのかはよく分からなかった。
真流は狡噛から小さな羽根の残骸のようなものを受け取ると直ぐにドローンの分析にかけた。
ディスプレイにはその羽根の遺伝子情報がでてくるがそれはのデータで、事情を話していた真流は「あららホントだ。」と納得していた。
「悪いけど全身スキャンさせてもらえるかい?」
狡噛はどうするかをに問う。
は黙って頷いた。服のホログラムを解除しは全身に青い光を浴びた。
救命士から見せられた時と同じような画像が出てくる。
背中の突き出た羽根は皮膚の深いところから始まっていた。
「こんなの生まれて初めて見たぜ。」
「俺もだよ真流さん。どういう構造か分かるか?」
真流は「うーん。」と唸りながら画像を拡大したり、機械部分の接合についての詳細を眺めたりしたがお手上げだという。医療に詳しい人の見解があればまた別かもしれないというが。
「脊髄と、背中の随所にセンサーみたいなやつがくっついてるな。これが関係してるとは思うが…。ちなみにこれどうやって作動するんだ?」
真流はくるりとイスを回してを見た。
不意な問い掛けに一瞬眉を潜めるもよく考えると思い当たる節はある。
「気持ちが高まるというか、興奮するというか、そういうときに変化が起きるような気がします。」
狡噛は先刻にが発狂して走って行ったことを脳裏で蘇らす。
「なら、これはさっき生えてきたやつなのか?」
が小さく頷いた。
「感情で作動するのか…。ますます奥深い代物だな。」
真流は何度も画像を拡大し、回転させ、成分の参考文献の検索もするがそう簡単にまとめることはできないようだった。
だが分かったことが一つ。
「一目瞭然だが、生まれつきの鳥人じゃあないわな。本人の意思じゃなきゃあ誰かに鳥になれってやられたわけだ。」
人造人間とは言いたくないがそれに近いものだろうと真流は言った。そんな言葉はアニメや映画の世界の物と思っていた狡噛ですらも目の当たりにすれば信る他ない。