第17章 楽園事件:8
ただ指先が触れ合うだけの遊びのようなのに内側から温まっていく。はその手を解いて宜野座の前髪を横に流した。さらさらと流しても戻ってくる。
今度は彼の手が髪を撫であげて耳にかけた。また顔が近づいて唇から温度が伝わる。押し当てるだけのキスで動けずにいるとゆっくり舌が入ってきて溶け出しそうになる。それが段々と味をしめたように激しくなる。隙間からはどちらの呼吸も漏れ出す。苦しい。だが離すと惜しい。再び全身で覆い被さり頬を擦り寄せる。温かくて心地良い。宜野座が溢す吐息にが震えた。耳か。人間より、やはり良いのだろうか。耳の縁を甘噛みしたり、舌を這わせるとがまた体を震わせてしがみついてきた。どこまでやっていいのか分からず試すようにキスしたり舌を入れたりした。
「んんっ…!」
我慢した声にならない声にスイッチが入ったように止められない。執拗に責め立てると彼女は息を荒げたので宜野座は頭を離しての頬に手を添えた。大事な物に触れるように優しく。
たがここから先に進めない。もっとしてあげたいが怖いと思ってしまっていた。
「こんなこと、言いたくないんだが…」
「なんですか?」
「俺はの言うとおり何も知らない。」
経験が全くないとは言いたくなかった。ないわけでもないが佐々山に勧められてやったVRで疑似体験のことは恥ずかしくて言えたものじゃない。
「だからがどうされたら嬉しいのか、教えてくれないか?」
今みたいに何かサインがあれば分かる。
も同じように宜野座に触れた。
「私も、よく知らないんです。」
今まではされるがままだった。相手が満足すればいいとしか思っていなかった。だからこれほど熱の籠もった感覚も初めてだった。
「探してくれますか?」
アンバーの瞳が上を向いた。視線が交わった。そのまま見つめあった。まるで心の中を探るかのように。そして恐らく何かを見つけた。宜野座は彼女の頬に添えた手をそのまま首筋を通って下ろしていく。検査衣のボタンは簡単に外せるようになっている。全て前についているし、指で弾くようにして簡単に一つ外す。外している本人もなぜか恥ずかしかった。四つほど外せば上半身は露わになる。袖を外して、肩に触れた。下着は着けていない。死体以外で初めて見た生身の女性だった。