第16章 楽園事件:7
「公安局の敷地にはドローンを配備し、阿頼耶が現れた場合は即座にバリケードを張ります。武装も許可します。」
「奴にドミネーターは効かないからな。」
「デコンポーザーなら反応するじゃないですか。」
「パワーチャージに時間がかかります。阿頼耶は動きも早いのでドミネーターに頼るのは危険です。」
スタンバトンの所持を許可されるものの接近戦は不利に近い。化身されたらパンチ一発で骨が砕けてしまう。そのため戦闘はドローンで取り囲みスタングレネードで動きを封じてからスタンバトンで痺れさせる流れだ。
「危険が予想されます。霜月監視官は阿頼耶が現れたらなるべく距離を取ってください。」
「え、先輩はどうするんですか?まさか前線に出るんですか!?」
常守は困ったように笑う。
「さんの安全を守らないといけないからね、彼女をフォローするよ。正直、阿頼耶にまともに対向できるのは彼女しかいないし。」
霜月はすっかり呆れかえっていた。監視官はそこまでせずに執行官を盾にすればいいのに。そんな激務にいちいち対応していたら命がいくつあっても足りない。
勝手にしてくれと言いたいのをぐっと堪えるがため息になった。
と、唐之杜から連絡が。防犯カメラに阿頼耶が映った。ここから一キロ離れた所だ。六合塚が経路を予測する。
「こちらに向っていると思われます。」
「さんの予測は当たりましたね。付近の道路を封鎖して通行人を入れないようにしてください。」
六合塚と唐之杜でドローンを遠隔操作し、公安局周辺から一般市民の立ち入りを禁止させる。リアル猛獣ショーを見られたらエリアストレスが上がってしまうからだ。
四人はそれぞれ武装準備を整え、念の為ドミネーターも所持し、エントランスへ向かった。外でが立っているのが見えた。白くて目立つ。何故か白い検査衣姿だった。膝下まであるワンピース型のそれは検査や治療がしやすいように前ボタン留になっている。首元には異質に光を放つネックレス。出会った頃の様な雰囲気を纏っていた。一係は外に出て周りを警戒する。すでに市民は範囲から出してある。夜間のせいか静かなものだった。阿頼耶の姿はまだない。それでもは一点を見つめていた。常守が隣で声をかける。
「阿頼耶は、来ますか?」
来る、とだけ彼女は言った。鋭い空気感で緊張が伝染する。