第15章 楽園事件:6
の所へ急いで戻った。彼女は切り落とされた腕を膝に乗せて切り口を押さえていた。痛みで動けなさそうだ。だがもう時間もあまりない。
「走れるか!?」
は首を振ることもままならない。
宜野座は切り落とされた腕を持たせてを横抱きすると建物の隅に移動した。このまま真下に上手く崩れるなら近くに設置されたタワークレーンに飛び移れる。ほとんど賭けだった。だがタイミングを慎重に図り飛び移った。クレーンの先に降りれたが足場はない。鉄骨が無数に組まれているだけだ。靴が滑り隙間から落ちそうになる。二人で落ちてしまうと思いの体を離した。が、宜野座は落ちずに済み、代わりに彼女の切られた腕が落下した。は足で鉄骨に掴まり逆さ吊り状態、一本しかない腕で宜野座を掴んでいた。助かった。どうにかクレーンに這い上がり、を引き上げる。礼を言いたいところだが、息が切れて余裕はない。それに爆発で崩れた建物の煙が辺りを包んでいる。口を開けば肺にも悪そうだ。
二人はクレーンを降りた。
常守達は避難して無事だった。が、阿頼耶は逃した。化身されて足止めまで喰らえばもう追跡はできない。が阿頼耶の行った方をずっと睨みつけていた。
一係はを治療のために保護して引き上げる。亮一の遺体も回収した。検査の結果、傷口から彼以外に六人の組織が見つかった。暗くてよく見えなかったが服の下も噛み傷だらけで、露出しやすい頭部と腕と足から膝にかけて、腹部も食い荒らされていた。とても人間のやることではない。だが不思議なことに抵抗の跡はなかった。押さえつけられたのか、抵抗の間もなく食われたのか。何にせよ犯人はまだ逃げている。猛獣も同然だ。どう対処するべきか。
は落とした腕をしっかり回収していたので縫合してもらった。細胞の再生が早いので骨や神経も含めて接合するのに一日程度で済んだ。但し相当のエネルギーを消費するらしく寝たきりの状態ではいた。
その後検査を終えた亮一の葬儀を行った。は焼却前の棺に彼のお気に入りの洋服と、自分の羽根を一枚入れた。
そして焼却炉の扉が閉まる瞬間は再び泣き崩れてた。常守がまた寄り添う。見ている方も辛かった。それから集めた遺灰が小さな箱に入れられてに手渡された。