第15章 楽園事件:6
「これから、どうするの?」
常守は心配している。すっかり覇気のなくなったは阿頼耶を追うことすら止めると言い出すのではと思った。もう仲間もいない、帰る場所もない。彼女はすっかり一人になってしまった。
「私…どこに帰ればいいですか?」
常守はすぐに答えられなかった。サイコパスを持たない彼女をどこに収めておけばいいのだろう。宜野座が常守を呼び出し二人はから離れた所で相談し合う。
「一係の刑事部屋を数日だけ貸してやるのはどうだ?」
「私もそう思ったんですけど、でもそれじゃあ解決にはならないじゃないですか。」
「だが傷心してすぐだ。とりあえず三日、見えるところに居てもらうのはこちらとしても助かるだろう。まだ連続傷害事件も解決していないことだし。」
「…そうですね。」
決心ついたところで改めて常守が伝える。
「さん、とりあえず刑事部屋で過ごすのはどうですか?事件のことも協力してほしいし、でもさん外に出たら探すの大変だから、こっちとしても居てもらえると助かるんだけど…」
「…いいんですか?」
の目はまだぼんやりとしている。
「うん、上には私から言っておくから心配しないでくださいね。」
「…ありがとう。常守さん。」
「良かったな、。俺も安心だ。」
彼女を刑事部屋へ見送り、常守らは執務室へ戻る。霜月がこの件について難癖をつけてきた。あいつも獣なのだから外でも十分に生きていけるだろうと。確かに本来ならそうかもしれない。だが今は違う。家族も同然だった仲間を失い、妹の死も直接的ではないが伝えられた。普通の精神じゃ済まないはずだ。現に彼女の様子はいつもと違い生気が失われている。
「私もね友人を目の前で失くした時、殺したのは自分だって思った。手にかけなくても救えなかったのだから自分がやったんだって。さんも多分、今自分をすごく責めていると思うの。人は後悔する生き物だから。」
霜月も思い出した。過去に友人が殺された時の喪失感を。何故止めなかったのだろうと自分を問いただし責め立てた。
あの時のことを。
「そうですね。」
執務室は静けさが充満した。