第2章 File:2
話の収拾がつくことなく、帝塚監視官が待っているからと宜野座は佐々山を連れて一係の執務室へ向かっていった。二人の言い合いがだんだんと小さくなっていく。
は安堵したように息を吐いた。
狡噛がその表情を確認するも今の彼女に走り出した時のような異常さは見られなかった。
「すみません、狡噛さん。」
初めてまともに名前を呼ぶに内心驚く。
それほど落ち着いたということなのだろうか。
「いや、俺の配慮が足りなかった。すまない。」
それに佐々山もあれで悪いやつではないと狡噛は言った。
それは三人の様子をみても思っていた。
「でもな、あいつは女好きが高じて潜在犯になったんだ。だからさっきのも正直心配だったんだが…まあ何も起きなくて良かった。」
狡噛は困ったように笑った。それを見つめるの表情は無ではなかった。
一度目を伏せるとは狡噛の手を掴んでまた走り出した。突然の事に驚くもどこかへ連れて行こうとしているのは分かったので止めなかった。
「おい!どこに行く気だ?」
は分岐する廊下で止まっては右や左を何度もみて道を選んでいた。そしてついた部屋はロッカールームだった。
は奥へ奥へ進み、その間もよく周りを観察していた。
「ここは男子用のロッカーだぞ。」
「人は来ないですか?」
「ん?まぁ、それほど出入りはないが…」
それを聞くなりは自分のシャツのボタンを徐ろに外し始めた。狡噛は慌ててその手を止めようとしたが逆に引っ叩かれた。
「やめろ、何やってる!見られたらどうする!」
何故か小さく声を張り周りを警戒してしまう。は半分ほどボタンを外すとシャツを腰まで脱いだ。
狡噛は目線を外して待っていると、は背を向けた。
もう良いのかと目を向けると、彼女の背は一瞬傷だらけに見えた。だがよく見ると違う。
「これが、何に見えますか?」
彼女の問い掛けは真剣なのに眼前のそれは信じがたいものだった。
背中の肩甲骨から肩にかけていたる所に小さな針のようなものが突き抜けていて、その一つ一つに細かな毛がびっしり生えている。とても小さいがそれが何に見えるかと言えば。
「羽根…?」