第15章 楽園事件:6
ただし宜野座がそう思ったのは阿頼耶と対峙したからだ。阿頼耶は首を目掛けて牙を向けてきた。と亮一は人を襲うようには見えないが、本当はそういう衝動を抑えているのだろうか。
「本人に聞いてみるのが早いな。」
宜野座は亮一のデバイスに連絡を入れる。が、応答がない。一分コールして切った。気がつけば折り返してくるだろうくらいに思っていたが監視官からGPSで場所を確認するよう指示された。友人の場所を監視するようでいい気がしないが命令とあれば仕方がない。
GPS検索を付ける。地図上に赤い点が点滅した。動いてはいない。
「どうする?監視官。常守を待ってからでも別に…」
「行きます!私だってできます!」
霜月の痩我慢で現場に向かうことになった。廃棄区画との境。建設途中で中止になったビルが複数立ち並ぶ。足元は凸凹としたコンクリートに汚染水が溜まっていた。辺は静かだ。
デバイスに搭載したライトを照らし亮一を探す。とてもこんなところに一人でいるようには思えない。も一緒なのだろうか。
GPSの位置はこの付近のはず。
「見つけました!」
離れた所で六合塚が叫んだ。近くにいた霜月が駆け寄るが六合塚はそれを抱き止める。
「宜野座さん!確認してください。」
見ないほうがいい。霜月には耳元でそう伝えた。
確認してと言われれば宜野座にはある程度予想がつく。大抵は原型を留めていない場合だ。
鉄骨の積まれた付近に横たわる黒い物体に近づくと辛うじてそれは亮一だと分かった。彼は血にまみれ、顔の肉がほとんどない。切り口が不揃いなところから噛みつかれ、肉を食いちぎられたのだろう。首に指を当てて脈を確認するがすでに死んでいる。恐らく半日は経っているだろう。亮一の腕にはデバイスがそのままになっていた。まるで見つけてくれと言わんばかりに。
「に急いで伝えないとだな。」
「私は常守監視官に連絡します。」
宜野座は亮一にシートをかぶせて隠した。霜月はようやく六合塚から開放される。
「どういうことか説明してください!」
子供扱いはされたくない。だが霜月には見る勇気もない。
それを二人は理解している。宜野座が説明した。
「亮一の遺体で間違いない。顔の肉がほとんど骨から削がれているがな。傷の状態から見て噛みちぎられたのだろう。」