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BERKUT【PSYCHO-PASS】

第15章 楽園事件:6


「私はあれは幻だったと信じたいんだから!」

「?何を言ってる。その目で見ただろう。」

さも当たり前のように言う宜野座に霜月は苛立ちを見せた。その不穏な空気に六合塚は溜息をつく。

「宜野座さん、霜月監視官は着任して日が浅いんですよ。色相濁らせるようなこと言わないでください。」

「そんなことで濁ってたら監視官は勤まらないぞ。執行官の言うことをいちいち真に受けるな。」

「余計なお世話です!真に受けてもいませんのでご心配なく!」

「この犯人の身元は?」

霜月を無視して捜査を進める宜野座にさらに霜月が苛立つ。監視官である自分を差し置いて勝手に話を進めるのは気に入らない。

「犯人は八巻賢章、二十五歳。工場勤務。過去に更生施設にいて…出所したのは十日前ですね。」

「え、更生施設って出られるんですか?」

気を取り直して霜月が話題に入る。
だがこの返答には六合塚も困っていた。

「色相がクリアカラーで犯罪係数が下がれば出られる筈ですが、それで本当に出られた人がいるなんて私も初めて知りました。」

六合塚も宜野座も入ったことがあるから知っている。潜在犯認定を受けて入る矯正施設のことだが、更生はほぼ不可能に近い。薬品による治療でサイコパスの安定を図る所だが入っている人間は大抵長ければ長いほど人間離れしていた。
今回の犯人は以前の職場だった物流会社で勤務中にサイコパスを濁らせ、忙しさのあまりセラピーを受けずにいたところ犯罪係数が上昇。同僚との口論が引き金になったようだ。

「彼は施設に入って約三ヶ月で出ている。あり得ないこともないのかもしれない。」

「念の為、施設から八巻のデータを送ってもらいましょう。」



三人は一度執務室へ戻った。
常守はまだ戻らない。連絡も繋がらない。心配だが先に進むことにした。更生施設からのデータが来ている。霜月が大きなディスプレイに内容を映した。八巻の入所から出所までの色相と犯罪係数の経過、生活記録、独房内での購入履歴なんかも分かる。
だが不審と思うところはパッと見ただけでは見当たらない。

「色相、ゆるやかに回復していますね。」

「至って普通だな…」

「いえ、ある意味普通じゃないです。こんな順調な回復。」
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