第2章 File:2
さらには廃棄区画の住人であるのこの発言。気狂いの巣窟であると思わざるを得ない。
「怪物は必要ないでしょ。早く…」
ボソボソと唱えるように早く早くとは言い続けていた。とても尋常と思えない。色相が濁っているのではないかと狡噛は彼女の携帯しているサイコパスから確認するが、全くのクリアカラーだった。
「なんでこんな気狂いが色相きれいなんだよ!おかしいだろ!」
そのサイコパスは壊れてるのではないかと、昏田は言った。
和久は昏田に落ち着くようにく言うとの方を向いて言った。
「君のいう怪物ってどんなもの?」
天利はおばけを想像し、狡噛は殺人鬼のようなものを想像した。
は静かに答えた。
「怪物は私、私は怪物…わたしは…。」
答えとも言えないそれに狡噛は少し苛立った。
全く話が前にすすまない。家に帰ってもこのおかしな少女と一緒かと思うと社会復帰を先にするべきとも思えてきた。
だがこの精神状態では適正が降りたところで何もできないだろう。恐らく餓死する。
それだけは避けたかった。
「さん、家族はいないって前に言ってたよね?」
和久はにセラピーを受けさせるために施設へ連れて行った際にそう聞いていたらしい。
この状態の少女からそれを聞き出せる和久を狡噛はより一層尊敬した。
「いつからいないの?小さいとき?」
は小さく頷いた。和久はさらに家族構成を聞く。
「母さんと、六花…。」
「六花さん?妹?」
問いかけたその時、は急に頭を抱えて震えだした。
爪を立てて目を見開き、名前を繰り返す。
狡噛は彼女の肩を掴んで揺すった。
「おい、大丈夫か?」
「六花…六花…!!ぁあああああ!!!」
突如発狂するは狡噛の手を振り払うと彼のデスクに飛び乗り、ディスプレイを飛び越えて走り出した。
「!待て!」
天利と昏田が狡噛に続いて後を追う。の脚ときたら特別に訓練されたかのように早い。
「止まれ!」
刑事課の廊下を走り抜けていると、遠く角を曲がってきた一係の執行官佐々山の姿が目に入る。
狡噛は迷うことなく佐々山に猛突寸前の少女を捕まえるように叫んだ。