第14章 楽園事件:5
「よぉ朱ちゃん。」
「亮一くん?どうしたの?」
「それがさ…」
「矯正施設に阿頼耶の手が回ってる可能性がある。」
亮一を遮ってが話す。亮一はつまらなさそうにデバイスを自分の近くに寄せるがは腕を引っ張ってそれを征した。
「それはどの程度の信憑性がありますか?」
「ない。」
「え!」
「ないけど、阿頼耶が私達のような怪物を作るなら子供を選ぶ。でも健全な子供じゃ無理。親から離されて行き場の無い子供に何か吹き込むと思う。」
「なるほど。小さな子どもたちを大勢見てきた阿頼耶なら、何か子どもたちを引き寄せる話術も心得ていそうですね。矯正施設はこちらで徹底して探してみます。」
「何か分かったら教えて。」
「もちろん。こちらも行き詰まっていましたから、情報ありがとうございます。」
やっと会話に切れ目が見えたところでは通信を切った。結局なにも話せなかった亮一は更に不機嫌な顔をする。
あとは結果を待つのみ。
が、数日後、常守の連絡からは収穫は得られなかった。面会に頻繁に訪れる者もいない。施設関係者にも変わりはない。もちろん、ここ最近で出られた人もいない。データ解析も行ったが何も出なかった。もしかしたら動くのが早かったのかもしれない。
進展がないまま季節は冬へと移り変わった。
街は色とりどりの電飾ホロで煌めく。鎖国が始まり昔のイベントは殆ど廃れたがこの時期にあったクリスマスというものはほんの少しだけ名残がある。それは冷たく澄んだ空気によって景色が活かされるからか、はたまた物販の促進のためか。
出動ついでのパトロール。常守と宜野座は街を眺めながら見回った。
「最近一気に冷えましたね。」
「そうだな。雪が降らないだけマシだが。」
「積雪と凍結は交通故障が起きやすいですからね。」
宜野座は助手席で通りを眺める。路面店は冬使用の服や雑貨を並べている。真っ白なコートが目に入った。女性ものだ。真っ白なそれがなぜか彼女を連想させる。は服装なんて微塵も気にした素振りはないが、本来女性というものは服や装飾が好きなイメージだ。しかし身の回りの女性もだいたいスーツなのでそのイメージに反するわけだが。唐之杜は別か。
「常守監視官もこの時期は服やアクセサリーが欲しくなるのか?」