第13章 楽園事件:4
「彼…亮一くん、よね。運ばれてきたときに体に付着してた血液を調べたら二人分とれたのよ。恐らく阿頼耶真のもの。」
唐之杜は大きなディスプレイに螺旋状の画像を映し出す。
見慣れたDNAの形だ。
この場の全員がそれに注目する。
「彼の遺伝子構造を調べるとね、これがなんと基礎があなたと同じなのよ、ちゃん。」
は声に出ない代わりに目を大きくして驚いていた。
「つまり、さんと血縁関係であるということです。」
「……。」
黙って俯くの肩にそっと手を添える亮一。その手も戸惑いが見える。
「そこで改めて聞かせて欲しいのです。さん。あなたの妹さん以外の血縁者を捕まえることに迷いはないかどうか。」
「そんなの、今の今知ったことを。すぐに答えられるわけないだろ!」
沈黙する彼女の代弁をする亮一。確かにそれはそうだ。それでも。
「構いません。血縁だろうとなんだろうと、阿頼耶を見逃す理由にはならない。」
「いいんですよ、理由にしても。」
常守の言葉にはだけでなく亮一も疑問符を浮かべる。
「血が繋がってるから。それだけかもしれません。それだけでも十分に理由にしていいと思うんです。もちろん、私達は阿頼耶を逮捕します。でもさんや亮一さんは市民ですから、危ないことをしなくたっていいんですよ。」
「そう言って手を引かせる気?」
「そういうわけでもないんですけど…」
ただ、辛くならないか心配だった。それだけが常守にとって気がかりだった。本来刑事であっても身内の案件は捜査から外されることが多い。や亮一は戸籍もサイコパスもないが市民に変わりはない。公安局は市民の健康なサイコパスを維持し守るのも仕事だ。
「私は妹を取り返す。阿頼耶を追うことは止めない。」
は睨むように常守を見ると至近距離で凄んだ。そして医務室を出ていくので亮一は早足で後を追った。職員のざわめきが聞こえて、閉じられたドアによってまた遮断される。
常守の口から思わず溜息が溢れた。