第2章 File:2
白目がほとんどなく、虹彩は黄色く瞳孔がギョロと動いたように見えた。
「うわっ!あ……あ…!」
椅子ごと後退する昏田はを指さすも声はでない。
あの不気味さをなんと表現したらいいのか、よく分からなかった。
ただ怯える様子の昏田を以外は不思議そうに見ていた。
「どうした?昏田。」
「…あ…、目…目が…!」
「目?」
天利と狡噛はを正面から見るも特に変わった様子はなかった。
は二人を交互に見て目を伏せた。
「何言ってんだ昏田。」
「ええ!だって今!」
は頭を抱えて狂い出す昏田からいそいそと離れ狡噛に指示された場所に腰を降ろした。
監視官の側にただ置かれただけの椅子で、まるで子供が父親の会社に付いてきたようだった。
狡噛は昨晩の他係の報告書に目を通したあと、の事情聴取をすることとした。
彼女が緊張しないように三係の執務室でただ隣り合って座って聞くだけにした。
それでもは昨日のように背中を丸めて視線を落とし、息もしているか怪しいほど静かにしていた。
「ちゃん、ジュースのむ?」
天利がしずしずと近寄ってきて小声でに聞いていた。狡噛は目だけ天利に一瞬向けたがすぐディスプレイに戻した。
は小さく首を横に振るだけだった。
「じゃあ、お菓子食べる?」
それにも首を横に振った。
「じゃあじゃあ、えーっと…」
「天利。」
「はいっ!」
狡噛の呼びかけに背筋がなぜかピンとなる天利。
ふざけているわけでないことは分かっているが、声色でいろいろと察したのだろう。
「を甘やかさないでくれ。」
「うわっ、もう親父面かよ。」
昏田が呟くも狡噛からの視線を感じて聞こえていたのかと即座に背を向けた。
「でも、ちゃんは今回の件の重要参考人ですよね。もうちょっと丁重に扱ってもいいんじゃないですか?」
狡噛は自分はそんなに粗末に扱っていたのかとこれまでをもう一度思い返した。確かに何も物言わない少女に少し腹を立てていたのかもしれない。
彼女が廃棄区画の住人だと思うから雑になるのだろうか。そんなつもりはなかったが普通の少女だったら確かに違ったかもしれない。