第2章 File:2
怒っているようで狡噛の口端は上がっていた。
やっと会話ができた、その進歩が嬉しかった。
今度は食事を摂らせ飲み込む所まで監視し、サプリメントも飲み終わるまで見張った。
久しぶりの食事には軽度の腹痛を起こしたが大事にはならないとみた。
落ち着いたので和久に連絡を取ると、大丈夫なら連れてくるように言われる。
確かにこのあとも一人で食事を取るか分かったものではないし、何か合ったときに戻らなければいけないのも狡噛に負担となる。
「、お前もこい。今日こそは三食、食ってもらうからな。」
は無表情のまま頷いた。
しかし彼女の服は施設から抜け出した時のままだ。
せめて何かホロを当ててやろうと、服装関連のホログラムデータを見せた。
「好きなのを選べ。」
は指でスクロールし、気になるものが複数あるのかいったりきたりさせながらようやく選んだ。
緑味の濃いカーキ色のシャツワンピースになった。
「へぇ、そういうのが好みか…」
「…。」
または黙ったままだ。最初に逆戻りしたようで狡噛は不機嫌そうに眉を顰めた。それを無表情でが見つめる。見つめ合うとは遠い、睨めつけあっているようでもあった。
家を出て車に乗り込んでも二人に会話はなかった。
昨日と同じようには外を見ていて、狡噛はハンドルを握らずに頭の後ろで手を組んで暇を持て余した。
三係の執務室では和久が次のシフトの昏田と天利と共に待っていた。
「すみません、お待たせしました。」
和久の席の前で詫びると、その後ろで小さくなっていたも頭を下げる。
「お!お利口だね〜ちゃんと主人の言うこと聞くようになったんだ?」
昏田が悪戯な笑みを浮かべていると和久にを脅かさないようにと注意された。
も嫌味を言われたのは分かったのだろう、妙に見据えたような目で昏田を見た。
その冷たい視線に不気味さを感じる。
は目線を元に戻すと昏田は内心ホッとしていた。
(ここの執行官よりよっぽど潜在犯みてぇだな…)
昏田は再びに一瞬だけ視線を向けた。が一瞬のつもりがまるで掴まれたように離せなくなった。
も同じくしてこちらを見ていたが、それは人の目ではなかった。