第12章 楽園事件:3
「今データを送った。この中に阿頼耶がいるか見てくれ。」
「…右から二番目。」
常守と宜野座は再び画像を確認する。
「こいつか。」
「もう少し今の方が髪が赤いけど、間違いない。」
常守は霜月にも連絡を入れた。ようやく的が絞れた。唐之杜はこの画像を元に街頭スキャナと防犯カメラの映像を再検索。しかし街頭スキャナのデータは五年前が最後。色相もクリア。防犯カメラには掠りもしていなかった。
「引っかかるのを待つしかなさそうですね。」
常守は困ったといった顔で宜野座を見た。何か打開策はないかと考えるがちょっと進んでまた行き詰まっている。
「阿頼耶はクラッキングも長けている。不具合がある映像は修復すると良いかもしれない。」
端末から聞こえるの声に少し救われる。淡々としているがそれなりに協力的だ。
「だそうです、唐之杜さん。」
「じゃあ、それらしいのがあったら修復していくわね。」
「お願いします。」
常守は唐之杜との通信を終えた。
今度は宜野座が自分の端末に呼びかける。
「お前は今どこにいるんだ?」
「東側廃棄区画の商業施設の屋上。」
とんでもないところにいるもんだと笑えてくる。
「そんなところで何をやってるんだ?」
「上から探しています。」
「上からって…」
「私は目が良いので。」
「目視で探すのか。」
「そうです。私の目とリョウの鼻で探します。」
リョウ、確か彼女の仲間の一人。二人は随分と原始的な探索だ。こちらが先回りするだろうと思った矢先。
「見つけた、切ります。」
「おい待て!」
切るなと言う前に切られてしまった。どこで見つけたのかが知りたいのに。だがGPSはついている。詳細の居場所はすぐに出た。
「錦糸町近辺だ。」
「行きましょう。」
常守は霜月等にも現地に向かうよう指示し、先にドローンを向かわせた。の移動予測もついた。道を歩かない彼らはビルからビルに飛び移るようにしているのだろう。マップ上の点は一定間隔で離れたところに現れる。
現場は廃棄された大きな商業施設とその周りに小さな建物が密集している。GPSが示すの居場所はそこからすでに数キロ離れていた。できる限り車で近づくがあとは足が頼りとなる。常守と霜月が到着したのはほぼ同時だった。