第12章 楽園事件:3
常守は唐之杜の後ろにある大きなソファに座っていくつもある画面の中心を見た。
表示されたものはあまり馴染みのあるものではない。螺旋がいくつもある画像だ。
「これ彼女のDNAなんだけど、とにかくすごいのよ!!」
興奮気味に言う唐之杜だが常守にはさっぱりだった。
「普通のDNAはある程度中身が決まってるの。親から受け継いでるからね。でも彼女のは動物のDNAが人の形に組み込まれてる!それに変異できるようにもなってるからこれが化身する元ってことね。」
「これをやった阿頼耶真は唐之杜さんから見てどうですか?」
「すごすぎるわよ!世界にもこんな偉業、他にないわ!まるで神話の世界よ。」
それだけの頭脳を持ちながら臓器売買や実験に生きた子供を使ったせいで逮捕されることになる。だが唐之杜に言わせれば、おかしなことをするやつがいるから研究が進み世界が発展した。阿頼耶の研究は彼の逮捕と共に誰か盗られ、別な形で活きるだろう。
「勿体ないなあ。」
常守は螺旋状のDNAをぼんやり眺めた。目が回りそうになる構図だ。
「あ、でね、面白いのはここからなの。」
「え?そうなんですか?」
「そう、このDNAは何が集まって出来てるんだろうと思って調べたのよ。」
「イヌワシ…ですよね?」
「そう、それも合った。でもね信じられないデータまで入ってて…」
唐之杜はタバコを吹かし一息入れる。それがもったいぶっているようで常守にはもどかしい。
タバコを片手に唐之杜は常守をじっと見つめた。息を飲む常守。
「あの狡噛慎也と同じDNAが組み込まれてたわ…」
「えっ!狡噛さんの、ですか?」
他人のDNAが何らかの影響で混ざることなんてあるのだろうか。常守が知る限りそれは夫婦の間に生まれる子供に起きること。
「まさか、兄妹!?」
「それがね〜、前の医療データでこっそり慎也くんのも調べたんだけど基本構造が違うから親は違う、二人は他人の線で間違いないわ。」
ならどうして…。そこに事件のヒントはあるのか分からないが狡噛が混ざってると聞けば気になる。
「関係持ってたのかしらね〜。」
唐之杜はあっさりと常守が考えないようにしたことを言ってみせた。
「か、関係って!!」
慌てる常守が可愛くてつい笑ってしまうお姉さんはタバコを灰皿に潰した。