第12章 楽園事件:3
一係の執務室では所属の全員が揃い、今回の事件の考察や今後について話合っていた。
の取調室での話を録音で聞いた他の二名はその内容に驚いていた。だが実際に化身は目の前で見ている。霜月は阿頼耶も化身が可能だと聞いたあたりで色相ケアのサプリをこっそり飲んでいた。
「阿頼耶については分かっていることが少ないです。この女性が近親者かは不明ですが明日聞き込みに行ってきます。」
ディスプレイにはショートヘアの女性の写真が写っていた。
よく見れば当人は数年前に病死となっているが、その母親は健在だった。常守はこの母親に話を聞くことになる。
「霜月監視官は廃棄区画周辺の調査を。」
「それ、幅広すぎませんか?」
「不審者がいないかの調査だけで大丈夫です。その中で当たりが出たらラッキーくらいに思いましょう。」
「そんな回りくどいことするよりもメモリー・スクープで調べれば良いんじゃないですか?」
いちいち噛み付いてくる霜月だが常守は表情を変えずに答える。これはの技でもあった。
「メモリー・スクープは最終的な手段にします。記憶を無理に呼び起こすのは本人に負担が大きいですから。」
「負担が大きいって、化物なんだからいいじゃない…。」
こればかりは聞こえないように小さな声で呟いた。
「の監視は俺に任せてくれないか。」
「そのつもりでした、宜野座さんにお願いします。彼女も私より宜野座さんの方が話しやすいでしょうし。あとで管理システムにログインできるようにしておきますね。六合塚さんは医療用の機材や遺伝子工学の研究に使われるような物を購入した人物を東京に絞って洗い出してください。」
「分かりました。」
「ねぇ朱ちゃん。」
繋いだままにしていたデバイスから唐之杜の声。余分なファイルを閉じて応対する。
「手が空いたらちょっときてくれる?」
「分かりました。今行きます。」
常守はあとを霜月に任せて分析官のラボへ向かった。暗いのにブルーライトが眩しいその部屋は少しタバコ臭い。
金髪の美女が常守に気づいて振り向いた。
「ねぇ、について調べたの。こんな面白い身体初めて見たからね、医療に関わってた者としては無視できないわけよ。」