第2章 File:2
自宅につく頃には既に救急車も到着していた。
医師免許を持つ者が一人とあとは救命用ドローンが二台居た。
点滴に繋がれたはソファに横たわっているが既に落ち着いているように見える。
救命士の男は慌てて入ってきた狡噛を見上げて家の人か確認をすると彼女の症状について説明した。
「消化器官の炎症、脱水症状、高血圧に不整脈。彼女しばらく食事はとっていませんね?」
「は、はい…」
「あなたは彼女のお兄さんですか?」
「いえ。」
狡噛は公安局監視官であることを説明し、彼女は保護対象であることのみ伝えた。
救命士の男はを調べた時のデータをもう一度確認した。
「さんは手術歴はありませんが、いたる所にかすかな手術痕が残っています。また、脊髄に機械のようなものが入っていました。」
救命士はスキャンした際のレントゲンを狡噛に見せた。
確かに脊髄に等間隔でなにか異質な物が入っている。
「これは…?」
だが救命士にもこの機械の役割は分からないという。
特別何かをしているわけでもなく悪さも勿論していないらしい。ただ理解不能なものではあったことを報告してきた。
「とにかく、サプリメントを出していきますので、あとは食事を取れば大丈夫です。」
「はい、ありがとうございました。」
帰る救命士とドローンを見送り、ソファに戻ると屈んでの様子を確認した。
いくらか顔色はよく見えた。は天井を見たまま目を合わせようとはしなかった。
「大丈夫か?」
はゆっくり瞬きした。
「すみません…」
「ん?何がだ?」
「まだ…」
は両手の甲で顔を覆って泣き出した。
嗚咽混じりにぽつりぽつりとようやく言葉を紡ぐ。
「ま、まだ…死ねなくて……うう…。」
何度も何度も謝っていた。
「バカか。誰がそんなこと頼んだ?」
「……。」
「誰かがお前に死ねと命じたか?」
「い、いいえ。」
「お前が死ねば喜ぶやつがいるのか?」
「…わかりません。」
「いねぇよ。」
狡噛は指を弾いての額にピンと当てた。
急な衝撃に額を抑える。
「痛いです…」
「もう一発やられたくなかったら飯を食え。」