第11章 楽園事件:2
彼の不在を狙ってはラボに忍び込むようになった。データを探ったりはせずに、部屋にある書物を片っ端から読んだ。前は見ても意味が分からなかった、だから知識をつける。関係があるのかないのか分からないが読み続けた。するとそれを真似して亮一も同じように書物を読むようになった。
自分たちに関係しそうな内容は伝えあった。そうして知識を入れるうちに益々センセイという人物に対して疑問が深まった。そうして数年後、やっと彼のパソコンのデータや紙の書類を見て意味が分かるようになった。
センセイ…阿頼耶の治療と称してやっていたことは遺伝子操作の研究だった。人間に全く別の生き物の遺伝子を組み込み、姿を変異させ、二つの姿を操る人間を作り出すことを目的にしたものだった。人間の細胞を遺伝子に直接プログラミングすることで変異させ、全く別の生物に変化させる。人間の細胞の再生回数は限界がある。その限界を引き上げ、化身を可能にしたとあった。ただし人に馴染むまで時間がかかること、化身の度にプログラミングが必要なこともあり、データを体に流すための中継器が設置された。それが脊髄にある機械だった。ある程度年月が経過すると体が自分の一部のような扱いをしだし、思考で直接プログラミングが可能となった。ただし全身の化身は少し時間がかかる上に、人に戻る時はエネルギーの消費が大きい。そのため人の形を内側にある程度残し、化身から戻る際は脱皮のように全て剥がれ落ちる仕組みに変更された。
それをは知らなかったが、確かにそうだと亮一は言っていた。
そしてその全身の化身まで初めて成功させたのはだった。それ以外は失敗に終わった。何百といた子どもたちのほとんどがだ。他遺伝子に対する拒絶反応や、化身に失敗し人間の形にも獣にも戻れず生きた肉の塊となり処分された者も。以外に成功したのは亮一だけだった。彼には新しい薬が打たれている。それが遺伝子の馴染みを早くした。
「、こっちも分かった。セン…阿頼耶の保管した臓器は全部海外に売られていた。そんでその金で研究に必要な機材やなんやらを揃えていたんじゃないかな。」
売ったお金が入ると、大きな金額のものを購入していた。そうであってもおかしくはない。
「ねぇ、私たちってなんの為に作られてるのかな?」