第22章 七転び、風折れ
「離せ。志津は俺と一緒に行くんだ」
「テメェッ···!! 糞親父っ!! 糞野郎、お袋を離せ!!」
食ってかかった頃にはとうに突き飛ばされていた。
ようやく顔を上げた志津の手が、為す術もなく空を切る。
真っ逆さまに落ちてゆく実弥に向かい、実父は吐き捨てるように言った。
「お前はまだこっちにもあっちにも来れねぇよ」
汚いものでも見るかのような腹立たしい眼差しも変わっちゃいない。
「俺の息子だってことに感謝しろ。特別頑丈な身体だ」
ほざけ。
死んでまで見下ろしてくんじゃねえよ畜生。
「······クソが」
「あ!! あ!! 意識戻った! 不死川さん起きた!!」
この世で目覚め開口一番、口をついて出た一言がそれだった。
歓喜する隠たちに実弥の声は届いていない。
眼前にぼんやり広がる空色は褪せたまま。
間もなく実弥は疲労で深い眠りに落ちた。
そして、再び危篤状態に陥ったのである。