第21章 消息の途切れ
「うわああああああ!!」
無一郎を弔う行冥の背後から、割れ鐘をつくような叫び声が響き渡った。
目覚めた実弥を待ち受けていたものは、臓腑をねじ切られんばかりのあまりにも惨い現実。
玄弥の変わり果てた姿があった。
「どうなってる畜生ッ!! 身体が、なんで鬼みたいに身体が崩れる!! ああああ、クソッ!! クソッ!!」
弟が眼前ではらはらと塵になってゆく。まるで鬼のそれと同じだ。
俺の弟は人間なのに。人間なのに。
実弥の頬に滝のような涙が流れる。
「兄···貴···」
「大丈夫だ何とかしてやる! 兄ちゃんがどうにかしてやる!!」
なにをどうしたらいいかなどわからなくとも口にしていた。
幼い頃、べそっかきだった玄弥によく言って聞かせていた言葉だった。
玄弥を救えるのならどんなことでもしてやれると思った。
すべてがもとに戻らなくたっていい。俺が玄弥の目となり腕となり足となる。だからどうにか生きてくれ、と。
「······兄···ちゃん······ご···めん······」
横臥 (おうが) したまま唇をおもむろに動かすと、玄弥はか細い声を震わせた。
大粒の涙を零す虚ろな眼差し。もう、玄弥の双眸に実弥の姿は映っていないのだと感じた。
「 "あの···時"···兄ちゃんを···責めて···ごめん······迷惑ばっかり···かけて···ごめん···」
「迷惑なんかひとつもかけてねぇ!! 死ぬな!! 俺より先に死ぬんじゃねぇ!!」
「守って···くれて···あり···がとう······」
「守れてねぇだろうが馬鹿野郎!! ああああクソオオオ!!」
責められたなんて思っちゃいない。玄弥に謝られることなんざ何も無い。お礼なんざいらねェ。生きてくれりゃあそれでいい。
生きてくれさえすりゃあ、それでいいんだ。
「兄ちゃん···が···俺を···守ろうと···してくれた···ように···俺も······兄···ちゃん···を···守り···たかった······」
"守りたかった"。
紡がれた玄弥の本音に実弥はとうとう言葉が続かなくなった。