第19章 :*・゚* 星月夜に果実は溺れ*・゚・。*:
「さ、ね···っ、ン」
「ならいいが···お前、飯の前におもての道場へ行ったろう···。何しに出た」
「あ、それは、お酒を届けてくれたっていう、隊士の竹内くんに、お礼を」
「この浴衣一枚きりの、姿でかァ」
「や、そこ···」
唾液で濡らした先端にくにくにと指先を遊ばせながら星乃に詰め寄る。
「···んな隙だらけの身なりで、むやみやたらとおもてを出歩くんじゃねェ」
「け、ど···、もう日も、落ちていたし、お礼だけですぐに」
「暗ぇから問題ねぇとでも言うのかよォ···。それこそ変な気ィ起こす輩がいねぇとも限らねェだろうがァ」
「そ、そんなこと···っ」
「絶対にないって言い切れんのかァ?」
「っ、それは」
「おめぇの"ここ"がァ、他の野郎の目に入っちまうのは、···俺ァ、我慢ならねェんだよォ···」
「っ、ぁあ」
緩急をつけて転がせば、ぽっかりと半開きになった唇から甘い喘ぎ声が零れ出た。
しかし星乃はその辺りの自覚が足りないのだと、実弥はとうとうやりきれなさを滲ませた。
わかっている。星乃が悪いわけではない。
過去、煮え湯を飲まされた経験から、星乃なりに留意してもいるようだ。
だが星乃はそうそう他人に疑いの目を向けることをしない。だから巡回中に怪我を負わされたりゲス眼鏡野郎の頼みごとを受け入れてしまったりする。
町を歩けば大抵の男が振り返る。そのことに、実弥はまったく気づくこともなかったのだが、 (たまにおかしな視線を感じ取ることはあった) あるとき行冥から聞かされた事実に目を光らせてみたところ、見ず知らずの男共が星乃に向ける確かな熱視線を大いに理解し、腹の底から鬱陶しさを感じるようになっていた。
この苛立ちをわかってくれとは言いたくないが、少しばかり危機感を持つよう仕向けても天罰は下らないだろう。