第14章 :*・゚* 桃色時雨 *・゚・。*:
言葉に詰まった。
実弥の名前を口にしただけで、こんなにも、胸がいっぱいになってどうしようもなくなる。
「すごく······好き、に、なっ···っ、」
漆黒の小さな眼に、星乃の涙が反射した。
月の光がなまえを照らし、零れ落ちる涙の粒が柔らかな色を纏う。
愛する尊さ。
愛されるよろこび。
こんな気持ちがあることを、ずっと知らずに生きてきた。
同時に、失う恐怖の濁流に飲み込まれてしまいそうになる自分に気がつく。
想いが通じあったとて、鬼の頚を斬る夜は否応なしに訪れるのだ。
「······実弥ハ、大丈夫ダヨ」
寄り添うように、紅葉は星乃の手の甲に身を寄せた。