第10章 【KoC】I FOR YOU…2【金城剛士】
剛士くんは道路の方に歩いている。阿修くんと愛染くんは先程のベンチに座って談笑しているように見える。
わたしは剛士くんを追いかけるために走って、公園の入口まで来た。
すると、私たちを、車のハイビームが照らした。
停まっていたのは、トモくんの車だった。運転手付きの。
トモくんはひらりと降りてきて、わたしの手を取った。
「ゆかり、探したよ。さぁ、帰ろう。」
戸惑うわたしを、剛士くんが庇った。でも、私の左手はトモくんに強く握られたまま。
「北門!!テメー、何しに来た。」
いつの間にか、阿修くんと愛染くんも剛士くんの隣にいる。
臨戦態勢と言うのだろうか。なんかピリピリしたものがわたしにも伝わってきた。
「倫毘沙、1人みたいだね。私用で来ただけだ。剛士。」
「竜ちゃん居ないんだ。ざーんねん。」
「そういうこと。さ、おいで。ゆかり。」
「トモくん…」
「おい。ゆかりから手を離せ。」
剛士くんがそう言った瞬間、トモくんが見た事ないような鋭い眼光で剛士くんを射抜いた。
「獅子堂のヘッド、金城剛士。君はここに居る増永ゆかりと恋人同士らしいじゃないか。」
「増永って…まさか。」
「さすが健十、察しがいいね。彼女はカズの妹君さ。」
「だからなんだっていうんだよ。」
剛士くんも、負けじと歯を見せて睨み返している。
やばい。カッコイイ。
うしろで愛染くんが呆れてるため息をついたのがきこえた。
トモくんは得意気に微笑みながら私たちに告げた。
「結論から言おう。彼女を諦めてくれ。彼女は、カズの妹であると同時に、親同士が決めた、俺の将来のお嫁さんでもあるんだよ。」
「えーーっ!!」
「なっ、なにそれ!わたし、知らないよ!」
阿修くんが大きな声を出した。
わたしは負けじと反論する。
「18歳になるまで秘密にしようって、俺たちの両親が決めたからさ。さ、行くよ。ゆかり。カズも心配してる。俺はカズに頼まれて来たんだから。」
さっき喧嘩したお兄ちゃんの顔が浮かんで、じわりと目が潤んだ。
「お兄ちゃんに…」
「そう。だから、ね。」
庇うように私の前に出ていた剛士くんが、1歩引いた。
「剛士くん…」
「今日はもう帰れ。」
「はい…ごめんなさい…」
わたしはトモくんの車に乗ったのだった。