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【短編集】夢路【B-project】

第10章 【KoC】I FOR YOU…2【金城剛士】


「へえ〜。お兄ちゃんたち、それってすごい!カッコイイねー!」

ただでさえカッコイイお兄ちゃん達がそんなカッコイイことをしてたなんて!わたしは1人でテンション爆上げになって、お兄ちゃんを置いていってた。無言でいるお兄ちゃんをはっとして見上げると、こめかみに人差し指を当てている。美しい眉が寄って、眉間にシワが…お兄ちゃんの雰囲気がいつもと違って、わたしは息を飲んだ。

「ご、ごめんなさい。」
「あぁ…ゆかり。ここからが大切だから、よーく聞いて。」
「はいっ。」

「その、獅子堂高校の、ヘッド…まあ生徒会長に相当するかな。とにかく、奴らの、俺たちの敵の、リーダーが、金城剛士。アイツなんだ。」

「へ…?」

剛士くんが、不良高校の、ヘッド。
それって私たちが付き合うことにあんまり関係ない気がするけど。
でも、和南お兄ちゃんやトモくんの敵っていうのは、ちょっと問題だ。なんとなくそう思った。

「そうなんだ…」
「だから、早いうちに別れた方がいい。倫毘沙が何をするか分からないし…」
「別れないよ!!だってわたしから告白したんだよ。生まれて初めて!初恋の人なの!」
「ゆかり…お願いだよ。」

和南お兄ちゃんは辛そうに顔を歪めてわたしを抱き締めてきた。
わたしはお兄ちゃんの胸板をぐっと押して、拒否した。

「お兄ちゃん!いつもありがとう。愛してる。でもこれは譲れないよ。」

そうして制服のポケットに入った携帯だけ持って、走って家を出た。
なんか悲しくなって、涙が止まらなかった。


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和南side
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ゆかりがあんなに強く、俺に反抗したのは初めてだった。
兄として応援したい気持ちも、ほんの僅かながら存在する。
だが、渋谷の抗争や、倫毘沙の存在を考えると、そんな気持ちは些末な事だった。
ゆかりが外へ行った音が聞こえたが、俺はちっぽけな本当の気持ちを握り潰すように、拳を握って、そこから動けなかった。

「あんな狼に惚れるなら、バイトなんてさせるんじゃなかった。」

小さい呟きは、誰の耳に届くことも無く消えた。
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