第3章 カフェラテ【阿修悠太】
「もーっ。ゆかりちゃん。気をつけなきゃ。男はみんな狼なんだよ?」
「ごめん、悠太くん。ありがとう。助かったよ。」
悠太くんは、向かい合ってわたしを覗き込むと、ニコッと笑ってない瞳で笑った。
「心配だから、家まで送るね?」
悠太くんが待たせていたタクシーに強引に乗せられて、タクシーが発進した。
「…え?悠太くん、わたしの家知ってるの?」
「ううん?知らないよ。」
羊の優しい眼差しだと錯覚していたその瞳は、獲物を捉えた狼のように細められた。
「僕の家まで送るってこと。男はみんな狼だって、言ったよね?」
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結局飲みすぎたせいでタクシーで酔って、悠太くんの腕にしがみつきながら知らないマンションを歩いた。とりあえず横になりたい。シャワー浴びたい。
「ゆかりちゃん。大丈夫?」
「ん…」
歩くことに集中していると、通りすがりに誰かに声をかけられた。
「おい、阿修。明日の撮影が…おい、誰だその女。」
「え?僕の彼女♡」
「ヒュー。悠太やるじゃん。」
「明日のことは明日聞くから、今日は邪魔しないでね〜♪」
「おい!阿修!!」
「剛士。ほっといてやれよ。自分がおいてけぼりにされたからって僻むなよ。」
「お前は一言余計なんだよ愛染!!」
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「ゆかりちゃん。着いたよ。ここ、僕の部屋。」
「悠太くん、ありがとう…シャワー貸して。」
「うん、いいよ。着替えは、僕のスエットとシャツ着て。」
脱衣室にチャチャッと着替えを用意してくれた悠太くんは、リビングでテレビをつけて待ってくれてるようだ。
わたしはグロッキーで酒とタバコの臭いと化粧を早く落としたくて、シャワーを念入りに浴びた。阿修くんのお風呂に、化粧落としがあったのは、アイドルだからかな。仕事でお化粧するもんね。
シャワーから上がって、着替えてリビングに行くと、悠太くんがふわっと微笑んでくれた。いつもと違う眼差しにドキッとくる。
「ゆかりちゃん。頭乾かしてあげる。おいで。」
わたしは素直に悠太くんの膝のあいだにすわった。
悠太くん、優しい。一気に好きの気持ちが溢れ出して、ドキドキが止まらなくなった。これ、わたし、特別だと思っていいかな。アルコールも回ってるし、わたしはドライヤーをかけてくれてる悠太くんの方へ向いて、ぎゅっと抱きついた。