• テキストサイズ

【短編集】夢路【B-project】

第3章 カフェラテ【阿修悠太】


秋も深まり冷え込む朝。
恵比寿で働くOLのわたしは、最近お気に入りの小ぢんまりとしたカフェで、ホットカフェラテを購入するのが日課になっていた。
今日もそのカフェで、カフェラテが出てくるのを、手を擦り合わせて待っていた。

「ホットのカフェラテでございます。」
「ありがとうございます。」

手を出すと、誰かとぶつかった。
深く被った帽子と、伊達メガネで隠してはいるが、魅力的なピンクの瞳ですぐわかった。有名アイドル、THRIVEの阿修悠太くんだ。

「あっ。ごめんなさい。」
「こちらこそ!ごめんなさい。」

会話はそれだけで、店員さんがレシート番号を確認して、阿修くんのホットカフェラテもすぐ手渡した。彼の順番はわたしの後だったらしい。

会社の子に聞いたら、その日は朝早くからTHRIVEの新曲PV撮影を恵比寿ガーデンプレイスでやったらしい。巷では話題だったそうで、どこからか情報を聞きつけたファンの女の子も多く来ていたそうだ。

「アイドルもカフェラテ飲むんだ。」

そんなことを考えながら、私は会社で少し熱の冷めたカフェラテを飲み、業務に就いた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

そんなことが一週間前にあった。
先週と同じ時間に、またあの阿修悠太くんに会った。
こちらを見ると、にかっと爽やかな白い歯を見せて、手を振ってきた。

(目立つと不味いんじゃ?)

そう思った私は彼に軽く会釈をして、すぐ会社へ出勤した。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

その週の土曜日、わたしは休日出勤でいつものカフェにカフェラテを買いに来ていた。

「お姉さん。」

わたしの肩をつついて、にかっと爽やかな白い歯を見せたのは、阿修悠太くんだった。

「こんにちは。常連さんなんだね。」
「はい。阿修悠太くんですよね。このお店の常連さんなんですね。」

今日は休日出勤で余裕があるので、会話を続けてみた。
阿修くんはぱあっと顔を輝かせて、こう言い放った。

「ううん、僕は常連さんじゃないよ。お姉さんが常連さんだってマスターに聞いて、待ち伏せしちゃった♪」
「待ち伏せ……」

マスターを見るとしれっとグラスを拭いている。マスター……

「僕、今日オフなんだ。一緒にご飯食べに行こうよ。」
「へっ?!?!」

まさかのアイドルからの誘い。変な汗がどっと出た。
/ 51ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp