第1章 運命の番
Jside
「ひゃ」
「ほら、声出したらばれちゃうよ。オメガが誘惑してるって」
唇を吊り上げた男性はジャケットの中に手を入れて、シャツの上から、気持ちの悪い手が這う。
後ろの人はさっきから太ももの内側を撫でられる。
「。。ゃだ、やっ、め」
「君が誘ってきたんだよ」
抵抗したくて男性の手を握るけど、縋るようにしか見えないし、既に力も入らない。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
どれだけ頭で嫌だと思っても、Ωの本能が奥を疼かせて仕方がない。
征服されたい、嫌だ、嫌だ。
「次で降りよっか?」
「っ、あっ。ん、ゃだ、やだ」
いくら首を振っても、手を掴んでも、身体に力が入らない。
電車を降りようとも、通路を塞がれてる。
こんなことになるなら、さっきの駅で降りればよかった。
嫌だ、仕事にも遅れる。
ガタイの良い男性に抱えられ、最初に痴漢してきた人が俺たちの分の荷物を持つ。
くっそ、こいつらグルだったのか。
今更後悔しても、ずっと疼く後孔は変わらない。
さっきから快楽を求めて、腰が動いているのが分かる。
嫌だ。
支配されたい。
嫌だ。
肉欲が欲しい。
電車が止まって、人の波に乗って電車から降ろされる。
ああ、終わった。
そう思った瞬間、グッと腕を引っ張られた。