第1章 運命の番
Jside
「ギャァーーーー」
開けて櫻井先生が入った途端、耳が壊れるくらいの悲鳴が聞こえた。
キィーンとする悲鳴に耳を塞ごうとする手を、頑張って抑制する。
櫻井先生は慣れたことのように、はいはい静かにって出席簿を叩く。
「今年も櫻井先生とかラッキーすぎる!」
化粧バッチリ!セットバッチリ!って子がそう叫ぶ。
女の子は色めき立ち、男子もなんだか嬉しそうだ。
みんなに慕われてるんだな、この先生は。
そう思いながら、メガネをあげた。
うちのクラスってベータだけだった、はず。
あれ、オメガが一人いるんだっけ、確認しとかなきゃ。
「ねえ、先生!新しく来た人?」
「えっ、あ、」
突然の俺に向かっての言葉にキョドってしまう。
「はいはい、うるさいぞー。さっさと話聞く」
先生がさらっと話題を変えてくれて、生徒に向かって軽く話をしていた。
その間に教室の後ろに行って様子を眺める。
暫くすると、先生から合図があって俺はさっさと体育館に向かった。
リハーサル通り生徒が座るところの横に立つ。
横には教頭がいて、俺の緊張している顔を見て微笑む。
「そんな緊張しないで。ちょっと紹介するくらいだからさ。ジャガイモたちが転がってるって思えばいいんですよ」
「じゃ、ジャガイモって」
「んはは、冗談ですよ。メガネ外したらみんなジャガイモに見えるんです。生徒たち可愛いですけど、大変ですから頑張ってくださいね」
教頭はメガネを外して目を細める。
そして全く見えねえって呟いた後、ニコッと笑ってそう言った。
暫くすると生徒たちが入ってきて、始業式が始まった。
台本通りに進んでいく式にどんどん俺の緊張が高まっていく。
終わりの合図があったら俺はステージに上って短く挨拶をして戻ってくる。
大丈夫、大丈夫。
ふうーっと息を吐いて落ち着く。
「最後に今年赴任してきた先生を紹介します」
その校長の言葉にグッと緊張が高まる。
「松本先生」
「ひっ、、あ、櫻井先生」
突然後ろから声をかけられて、肩が跳ねる。
横を見ると櫻井先生のキレイな横顔が見えた。
「大丈夫だよ。ゆっくり軽く言えばいいから。いい生徒ばっかりだからさ」
「うん」
頷いて、校長の合図にステージに向かおうとする。
その時、頑張ってと言うように背中を押されてそれに緊張がほぐれて、そのまま挨拶をすることができた。