第1章 運命の番
Jside
落ち着いてから保健室を出ても、伊藤先生の言葉がぐるぐる頭を回る。
運命の番。
それが実在して、しかも俺だなんて。
どうしろって言うんだよ。
確かに櫻井先生はイケメンだ。
顔もタイプ。
だけど、αだし大体向こうが俺のことどう思ってるかもわかんないし。
さらに本当に運命の番かなのかも分かんないし。
あんな質のいいαなら彼女の一人くらい居るよな。
もしかしたら結婚してるかも。
なんて妄想しながら職員室に戻った。
「ああ、松本先生!」
デスクにつくと気付いた櫻井先生が俺に駆け寄ってきた。
ま、まずい。
目を合わせないように。
下向いて。
「はい」
「さっきはごめんなさい。多分、俺のせいだよね」
「えっ、あ、違いますよ」
「俺、他のアルファよりフェロモンが強くてさ。すぐ煽っちゃうから。早く番見つけろって話なんだけど、中々決まんなくて」
「ええ?恋人も居ないんですか?」
「恥ずかしながら、フリーだよ」
櫻井先生はハハって笑う。
それにすぐ良い人見つかりそうなのにと言うと、遠い目をして言葉を出した。
「色々あるんだよ。。。」
「あ、ごめんなさい」
あお、これだから俺は。
よく人に立ち入りすぎて、引かれる。
それか勘違いされる。
散々学んで辞めようと思ってるのに。
「ああ。大丈夫だよ。重い話じゃないから。それにしてもその敬語やめない?」
「で、でも先輩です」
「いーの、いーの。2歳しか変わんないんだからさ。それに俺はもう崩しちゃってるし」
「けど」
「ほらさっきみたいに話そうよ」
「。。。じゃ、じゃあ。わかった。これからよろしく」
「はいはい。まずは1年よろしくね」
ニカって笑った櫻井先生は出席簿を手に取って教室に向かった。
俺も慌てて後を追う。
「流れは聞いてると思うけど、今からちょっと話してその後着任式兼始業式ね。そのあと、自己紹介とかして委員会決めて、入学式やって午前中で終わり」
「はい」
一階の職員室から三階まで階段で上がって、廊下を歩く。
一般的な扉の上に3-Aというプラカードが掛かっていた。
「じゃあ、俺らの受け持つクラスだ。わかってると思うけど、生徒の前じゃ敬語だよ」
「うん」
コクリと頷くとニコッと笑って、櫻井先生は扉を開けた。