第1章 運命の番
Jside
「どう?少しは落ち着いた?」
「落ち着いてたんですけど、さっきの声でまた」
「そう。。。あのねあなた番はいないのよね」
「はい、」
「今回はなんで発情したのかわかる?」
「えっと、普通に話してて、それで櫻井先生と目があったらばあって」
伊藤先生は目線を落としてそうと言った。
それに違和感を覚えて追求すると、ふうーっと息を吐いた。
「松本先生は運命の番って知ってる?」
「はい。母に聞いたことがあります」
「それって実際にあるのは知ってるかしら」
「ええ!?運命の番っておとぎ話じゃないんですか?!」
運命の番。
そのαとΩは目を合わせただけで本能的に惹かれ合うっていうやつ。
Ωは急性的な発情をおこし、αはそれに煽られるらしい。
その関係は既に番がいても有効で、普通の番の関係では断ち切れないほど運命の番というものは凄いらしい。
けど、Ωの番の関係は俺が死ぬか向こうが死ぬかしないと解消されない。
番以外のものと性交したら、吐き気頭痛、精神的苦痛に苦しむ。
だから番がいる状態で運命の番を見つけたら、辛いだけって母が言っていた。
「ええ。本当に稀だけどね。だって世界中の人の中から巡り合うんですから。でも、世界中で100組ほどいると報告されてるわ。だから、これは憶測でしかないのだけれど。もしかしたら、あたなと櫻井先生は運命の番かもしれないわね」
「。。。はあ!?え、は、俺と櫻井先生が運命の番!?」
え、は。
そんなわけ!
運命の番だなんて、そんな。
「あくまで推測よ。でも、ヒート周期以外にラットを起こしていないアルファもいないのに、起こるわけないのよ。2回とも櫻井先生と目を合わせたらでしょ。報告では目を合わせても発情だけして、お互いが気付かないパターンがあるわ。目を合わせたのが短かったからかもしれないわね。櫻井先生は匂いには敏感だけど、鈍感だから」
そう言って伊藤先生はクスリと笑った。
けど、俺はそれどころじゃない。
αに嫌悪感はないが、αと付き合ったことはない。
怖いから。
だけど、運命の番なら番にならないと。
「ここは移動がないからずっと一緒よ。もし、番になりたくないのなら目を合わせないようにしなさい。、そして薬を多めに持ち歩くこと。ポケットによ。まあ、恋愛していいと私は思うけどね」
そう言ってまた伊藤先生は笑った。