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【鬼滅の刃】外伝 紫苑

第2章 第二章 刃、鋭く玲瓏に


里が滅んだあの日、外は晴れていたのか、雨だったのか、わからない。思い出せないけど、

私の生まれた里は、大きな山の麓にある小さな里で、
他の刀鍛冶の里と少し違う事があるとすれば、たった2つちょっと変わった風習がある事位だ。
『火種を絶やさぬ事』『石を削る際は山の頂上の泉で禊をして、石を清めてから使う事』

炉の焔に使う火種はとても大切なもので、代々里長の家で絶やす事なく保管してるもので、毎日火守と呼ばれる人が、交代で見ている。
そしてこの山で採れる石は陽光を閉じ込める性質がある神の磐座と呼ばれていた。神様の身をそぐのだから自分達も触れる際は必ず禊をする様にと言われていた。

なぜそこまでするの?子供ながらに疑問に思い大人に聞いた。

「ここはね、芹。私達のお爺さんのそのまたお爺さん…ずっと昔にご先祖様達が見つけた土地なんだ。」

この地に宿る物が人が、代々私達を守り、悪しきものを幾度も退けてきたのだと。祈る事は死者や神々と話をする事なのだ。
私達がこの地に生きた証なのだ。と

「そして、これは私達から芹に、芹から子供達に、託していく希望の………」

でも、

里が襲われたあの日、あの日もいつもと変わらない日常だった事は間違いない。
朝起きて、両親に挨拶をして、我先にと池へと行った。
炉の焔が弱々しくも揺らめいていて、酷く目に焼き付いて離れなかった。
池の、水はいつもと変わらない。池なのに泉みたいに澄んでいて朝焼けに照らされキラキラと橙色に水面が煌めいていた。
否、アレは朝焼けではなかったのだ。

山を下り里に戻った時、其処は、火の海だった。
炉の焔よりも吹き付ける熱風は生暖かくすら感じる、それでも周りで倒れ付す里の皆から流れる血を焼き、肉を焦がしていく、真っ赤な焔。まるで血の海だ。
この世に地獄と言うものがあるのなら、自分が今立つこの場所は、煉獄とはまさにこの事を呼ぶのだろう。

何故?誰がこんな事を??恐怖に染まった精神は、それでも火種を守ろうと、里長の家の祭壇の前に足を踏み入れる。
転がり込む様に入った部屋も既に火の手が迫っていて一刻の猶予も無い。祭壇の前に足を踏み入れ、目の前が真っ白になった。
絶えてはいけない火種は消えていた。

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