第1章 ファンド学園の学園祭
ファラガは舌打ちする。
(何故か素で居ようと思ったのが間違いだったか?)
そう内心で呟いていると講堂内がざわめく。
「?」
「なんだ?」
全員がある方向を見ていて、2人もそっちに視線を向ける。
「「ッ!?」」
講堂の階段からオレンジ系をふんだんに使った綺麗なドレスにハーフアップにしているプラチナブロンドの女子が居た。
その右耳には自分の知る、たった一人の相手に渡した物。
「誰だよあの女子」
「めっちゃ可愛いじゃん」
「誰か誘うぜ」
そう男子達が呟く中、ファラガは素早く階段まで来ると右手を差し出す。
これにはその場に居た全員が驚く。
「私と踊っていただけませんか?」
相手は少し戸惑った後、ファラガに手を添えながら言う。
「……喜んで」
それはあの時よりも女性らしい声音に変わりつつある再会を待ちわびていた少女。
彼女もまたずっと会いたかった人、幼かった彼は青年へと変わっているが見つめる海の様な瞳は温もりに満ちている。
音楽が始まると2人は中央で踊り出す。
全員がそのダンスに酔いしれていた。
でも12時の鐘が鳴ると同時に彼女は外へと駆け出す。
ファラガは見失わない様に追い掛ける。
学園の森の所で彼女はファラガに振り返った。