【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第152章 ◇第百五十一話◇未来を憂う月【女型の巨人編】
「親としては、相手が誰だろうと娘が離れていくのは心配なものなんだ。
だから、いくつか、約束をしてくれないだろうか。」
頭を下げたまま父親が言う。
そして、リヴァイ兵長から肯定の返事を貰って漸く顔を上げた。
「娘は、君と苦難を共にすることを選んだ。
これからも娘はいろんな酷な選択をする場面に立たされるんだろう。
そのとき君には、誰よりも娘の理解者でいてあげてほしい。きっと、私達では無理だろうから…。」
「わかった。約束しよう。」
「たまには、私達のもとに娘を連れてきてくれたら嬉しい。」
「あぁ、それも約束する。」
「それから、命を懸けなくてもいいと言ったのは、言葉のままだ。
は自分の意志で調査兵でいることを選んだ。その責任は自分の命でとらないといけない。
だから、君が命を懸ける必要はない。」
「悪いが、それは約束出来ない。」
「いいか、リヴァイくん。は本当に君を愛しているようなんだ。
今日、それを嫌というほどに思い知った。その君が、自分を守って死んでしまったら生きていけないよ。
だからどうか、生きていてくれ。に君を見送らせないと約束してほしい。」
「それは…。」
リヴァイ兵長は言葉に詰まっていた。
でも、父親の願いは、そのまま、私の気持ちだった。
思わず私は、両手で口を押える。鼻の奥が苦しくなって、何かが押しあがってきて目頭を熱くする。
「それを約束できないのなら、私達は娘を君には託せない。
共に生きると約束してくれ。どちらかが、どちらかのために命を落としたらいけないよ。
そして、究極の選択のとき、兵士として生きなさい。それが、君たちが選んだ道なんだろう?」
「…わかった。約束する、必ず。」
「君なら、分かってくれると思ったよ。」
ホッとしたように言った父親だったけれど、目頭は赤くなっていて、拳は小さく震えていた。
気づいたら、私はソファから立ち上がっていた。
飛びつくように父親を抱きしめる。そんな私を母親が抱きしめた。
「私、幸せだから…っ。パパがいて、ママがいて、大好きな人が一緒に生きてくれる…っ。
幸せだよ…!」
「当たり前だ。幸せにならないと許さん。」
父親の手が私を撫でた。
子供の頃はもっと大きかったその手は、やけに頼りなく感じて、私は久しぶりに父親に抱き着いて泣いた。