【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第145章 ◇第百四十四話◇囚われの身のお姫様【女型の巨人編】
恋人の母親として初めて会ったときから、苦手だった。
私が息子の恋人だということを快く思っていないようだった。
いや、実際、ルーカスのいない場所で嫌味を言われたことだってあった。
それが、やっと別れてくれたと思ったら、いきなり結婚の日取りまで決まって宿敵が戻ってくるのだから、気に入らないに決まっている。
「それで、どうしたの。何か用があったんでしょう。」
自分がどんな場面を母親に見られたのか、気にも留めていない様子のルーカスは、その用事にはあまり興味はないようで、母親の方を見ることもなく、抵抗した時に乱れて露になっていた私の太ももをいやらしく撫でた。
「…っ。」
私がドレスの裾を戻して脚を隠すのとほぼ同時に、ルーカスは手首を母親に掴まれた。
でもそれは、女性に対しての態度を咎めるためのものではなかった。
母親は汚いものを触るなというように眉を顰めた後に私を睨み、ルーカスはお気に入りの玩具を取り上げられた子供のように不機嫌そうに口を尖らせる。
「その女に確認をしに来たのよ。」
ルーカスの母親はそう言うと、私の方を見た。
こんな風に真っすぐに顔を見られたのは初めてだった。
破れたドレスの胸元をギュッと握りしめ、憎悪しか宿っていない彼女の瞳に対峙する。
「あなた、今までに巨人を数えきれないほど殺してきたそうね。」
「だったらなんですか。」
「あぁ、本当におぞましい娘だこと。でも、まぁ、それが本当ならいいわ。
分かってるでしょうけど、あなたにはこれから、私達家族を命を懸けて守ってもらいますからね。」
いくらでも代えの利く駒に過ぎない兵士でも見下ろすような母親の言葉で、私は漸く、こんなに急だったのにも関わらずルーカスとの結婚話が順調に進展している理由を理解した。
私は、タダで自由に使える都合のいい兵士にされようとしているのか。
ルーカスの母親は、汚らわしい遊びはやめろとルーカスに釘を刺した後、部屋を出て行った。
「君はどうしても巨人と戦いたいみたいだから、僕が母親に言っておいてあげたんだよ。
この前、調査兵団のせいでストヘス区に巨人が出てから母が不安になっていてね。
君が調査兵だったことが、こんな風に役に立つとは夢にも思ってなったよ。」
ルーカスが私を抱きしめる。
とても満足気に、面白そうに。