【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第145章 ◇第百四十四話◇囚われの身のお姫様【女型の巨人編】
ルーカスが痺れを切らして侍女達に持たせたウェディングドレスの中から、試着もしないで適当に選んだ。
もっとちゃんと試着をしてから選んだ方がいいとかなんとか彼女達に説得されたけれど、そもそも本番当日にそこにいるつもりのない私にとってはどれを選んでも同じだった。
仕方ない様子で侍女達が出て行ったのと入れ替わりで、ルーカスが部屋に入ってきた。
すれ違うときに頭を下げた彼女達は、まるで恋をする少女のように頬を染めていて、相変わらずのルーカスの王子様ぶりにむしろ感心した。
「相変わらず、僕のお姫様はご機嫌斜めだな。」
ルーカスは、ソファに座る私の隣に腰を降ろした。
頬を撫でようとする手を振りほどき、近寄るなとばかりに立ち上がる。
壁外調査から生きて帰ればもう諦めるー。
そう言ったはずのルーカスがなぜまた現れたのか。
それは、この屋敷に連れられた日の夜に責めて、嘘を吐いたのはお互い様だと言われてしまった。
ルーカスが立ち上がり、私を後ろから抱きしめると、まるで耳たぶにキスでもするように口元を近づけて囁くように言う。
「もう諦めたら?あの男は今や指名手配犯で君を迎えに行くどころじゃない。
そもそも、ドブネズミは王都には入ってこれないんだよ?
また地下街に戻りたいなら別だけどね。」
「最低ね。」
「自覚はあるよ。」
可笑しそうに言って、ルーカスがクスクスと笑う声が耳をくすぐって最低な気分になる。
離れようとした身体は、腰と胸の前に手をまわされて捕らえられてしまった。
やめてと抵抗するのも虚しく、訓練で少しは鍛えたはずの私の身体は自由を奪われたままで、思い通りにはならない。
ルーカスがこんなに力が強いなんて恋人の頃は知らなかった。
「どうしてそんなに僕を拒むの?また、殺されたい?」
意地悪く言ったルーカスが、私の首元に舌を這わす。
思わず小さな声が漏れ、肩が揺れれば、ルーカスは満足気に続ける。
「君はここが弱いんだもんね。僕は知ってるよ。
君がどうされるのが好きなのか、どんな顔で求めるのか。
僕達は元ある場所に戻っただけさ。」
私を自分の方に向き直させると、ルーカスは唇を重ねてこようとした。
すぐに横を向いて避けて、口元を手で隠す。
不機嫌そうに眉を顰めたルーカスは、さっきまでの王子様のような雰囲気を捨て去り、私を強引にベッドに投げ捨てた。