【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第145章 ◇第百四十四話◇囚われの身のお姫様【女型の巨人編】
私の幸せを、無条件で願ってくれる人だと思っていた。
今も、そうなのだと知っている。
父も母も、こうすることが私の幸せだと信じているのだろう。
彼らのために、私はここで幸せのフリをして生きていくべきなのだろうか。
でもー。
「リヴァイ兵長しか私を幸せには出来ないの。
そんな嘘ばかりの記事で、私が彼に失望すると思ったら大間違いよ。
何度も言うけど、ルーカスはお母さん達が思ってるような人じゃないのよ。」
だから絶対に幸せになれないー。
私が何度そう言ったって、無駄だった。
娘を調査兵団の兵士にして壁外で巨人の前に突き出すようなやつより悪い男はいない、と父も母も聞く耳を持たない。
でも、母の顔を見ていれば、私は分かる。
リヴァイ兵長のことを信じていたときの母と、ルーカスと話しているときの母は、同じようで、別人のように違うから。
「お母さんだって、お父さんだって、リヴァイ兵長がどんな人か知ってるはずでしょう。
ねぇ、本当にこれでいいと思ってるの?
お願い、私の幸せのためだというのなら、今すぐ彼のところに行かせて。」
窓を眺めていた母親は、深呼吸するように一度目を閉じると、カーテンを閉めて、外の世界とこの部屋を遮断した。
それから、私の隣に腰を降ろして、私をまっすぐに見て口を開く。
「生きてこその、幸せよ、。リヴァイさんが素晴らしい青年だってことは知ってる。
でも、最後の最後にあなたを守ることが出来るのは、王都に暮らすルーカスさんよ。
彼ならきっと、どんな手段を使ってでも、あなたを守るわ。」
意志の強さを感じる瞳、そして、言葉ー。
もしかしてー。
「お母さん、ルーカスが本当はー。」
「あの人があなたを愛していることに間違いはないの。
だから、何も心配しなくていい。分かったわね。」
私の言葉を遮った母親は、有無を言わさぬ瞳でそれだけ告げ、部屋を出て行った。
もし、ルーカスの正体に気づいていて、それでも結婚させようとしているのなら、私は何を訴えて抵抗すればいいのか分からなくなる。
それこそもう、愛に訴えるしかない。
もしかして今、リヴァイ兵長が迎えに来てないかと窓を見ても、重たいカーテンに閉ざされ、小さな光すらも漏れていなかった。