【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第144章 ◇第百四十三話◇引き裂かれる2人【女型の巨人編】
深い愛と、痛々しいくらいの想いが、私の心を震わせる。
思わず、誰よりも強いその背中に触れようとした私の手は、空を切る。
私が触れることを許さなかった父親は、リヴァイ兵長の胸ぐらを掴んで持ち上げた。
「惚れてる、だと…?!は何度も死にかけたそうじゃないか!!
そんな危険な場所に連れて行って、それで惚れてるだと!?守る!?どの口が言ってる!?
とにかくっ!うちの娘を調査兵にする気なんかない!!今すぐ連れて帰る!!」
「待ってよ!!人類のために命を懸けられるなんて素晴らしいって
お父さん、言ってたじゃない!!ずっと生きて帰って、リヴァイ兵長は凄いって!!
私だって同じよ!命を懸けて世界のために戦ってるの!!どうして褒めてくれないの!?」
リヴァイ兵長の胸ぐらを掴み上げる父親の腕を、乱暴に揺さぶった。
すると、父親は怒りのままに声を張り上げた。
「そんなのコイツが壁外に行って命を懸けるのとお前とじゃ、全然話が違うだろうが!!
他の調査兵達が命を懸けて死んで帰って来ようがどうでもいい!!
娘が壁外に出て巨人と戦うのを褒める父親がどこにいるって言うんだ!!」
その腕を振り下ろして、リヴァイ兵長を地面に叩きつける。
また、だ。
リヴァイ兵長はそれくらい避けられるし、平気なはずなのに、また思いっきり床に腰を打ちつける。
まるでわざと、父親の好きにさせているみたいにー。
リヴァイ兵長は、そんなに強くて優しい人なのに。
父親の言った言葉が、許せなかった。
「お父さん、それ…、本気で言ってるの…。」
私は初めて、父親を軽蔑の目で見たと思う。
ここにいる調査兵達はみんな、命を懸けて人類のために戦っている勇敢な兵士達だ。
私は、彼らのことを心から尊敬している。
そんな彼らの仲間として、隣に立たせてもらっていることをとても誇りに、思っているのにー。
「話にならない。リヴァイ兵長だけじゃない。ここにいるのは、みんな、私の心から大切な人よ。
その人達のことを、死んで帰ってきてもどうでもいいなんて言う人は、私の父親じゃない。
帰って。」
父親に背を向けた時だった。
腰をかがめ、リヴァイ兵長に触れようとした私の背中に刺さるように聞こえてきた甘い声。
「帰るのは、君だよ。。僕と一緒にね。」
それは、ルーカスのものだった。