【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第16章 ◇第十五話◇入団【調査兵団入団編】
初めてあのお店で見たときから本当はずっと欲しかったティーカップ。可愛くて、お洒落で繊細で、すごく私好みだった。
でも、今、このティーカップのことがもっともっと好きになった。大切になった。
「…あぁ。もう二度と死なねぇように訓練に励みやがれ。」
「はいっ。」
ぶっきらぼうだけれど、とても温かい上官からのお言葉に、私は力強く答えた。
耳に響くから五月蠅いとか文句を言うリヴァイ兵長の声が優しくて、私は少しだけ笑った。
「私が欲しかったティーカップがこれって、どうしてわかったんですか?
店主さんから聞いたんですか?」
「何言ってんだ。お前が自分で言ったんだろ。」
「あ…。」
そういえば、カフェで口走った気がする。
あのとき、リヴァイ兵長は心から興味なさそうにしていたのに、覚えていてくれたのか。
嬉しいというよりも、なんだか恥ずかしい気持ちになった。
(やっぱり、すごく綺麗。)
木箱からティーカップを取り出して、月明かりに照らす。
天使の羽がキラキラ輝いてとても綺麗だ。
さっきまでは不気味だと思っていた窓の外の世界は、月明かりと星の瞬きで目が眩むほどに輝いている。
「あ、そうだ!ちょっと待っててくださいっ。」
いいことを思いついた。
私は、棚の中からいくつかの紅茶の葉を小さな紙袋に分けていれて、リヴァイ兵長のいる窓際に戻った。
さっきまで背を向けていたリヴァイ兵長は、訝し気にこちらの様子を伺っている。
「何だ?」
「これ、お祝いのお返しです。」
「そんなもの必要ねぇ。」
「この前買った紅茶の葉なんですけど、とっても美味しかったですよ。」
「…仕方ねぇな。もらってやろう。」
「はい、どうぞ。」
素直じゃないのに素直なリヴァイ兵長が面白くて、クスクス笑いながら手渡せば、少しだけ睨まれてしまった。
それから私は、あのお店で買った紅茶の葉のことを話した。
どんな味だったとか、どれがおすすめだとか、今度はどんなのを買いたいのかとか。
仕事終わりで疲れているリヴァイ兵長は素っ気ない返事をしながら、私のお喋りに付き合ってくれた。
気づけば、空が白くなるまでずっと、不安を取り払うように話し続ける私の話に、文句も言わずただずっと、耳を傾けてくれた。