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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第2章 ◇第一話◇悪夢の再来【調査兵団入団編】


声の主は、瓦礫の下で横たわっていた。
幸い瓦礫同士が重なり合うことで出来た隙間にいたおかげで、身体が押し潰されてはいなかったが、足をどこかで打ったのか、はたまた何かがあたったのか、足の骨が折れているらしく歩けないと言う。

「この娘を連れて逃げてください…っ。」

彼女の腕の中には、まだ2、3歳ほどの少女がいた。
子猫のような鳴き声はこの子の泣き声だったようだ。
おそらく、あの轟音と爆風の中で、母親である彼女が必死に守ったのだろう。身体中、血だらけでボロボロの彼女に反して、少女の身体は、血や煤で汚れてはいるものの、大した怪我はしていないようだった。
だが、まだ幼い少女が1人で逃げることも、逃がすことも出来ずに、母親は動けない身体で少女を守りながらずっとここに隠れていたのだろう。
巨人の恐怖、そして、娘を死なせてしまうかもしれない恐怖に耐えながら―。

「ダメです、一緒に逃げましょう。」

瓦礫の下にいるとはいえ、母親の身体の上には瓦礫は乗っていない。
足の骨が折れていては1人では走れないだろうが、私が支えればなんとか歩ける程度は動けるだろう。
娘も怪我をしていないのなら、手を引いて連れていけばいい。
内門もそこまで遠くないから、私にも出来る―。自分にそう言い聞かせながら、私は母親の身体を瓦礫の下から引っ張る。
だが、現実はそう甘くないことを、思い知らされることになる。
あと少しで母親の身体が瓦礫の下から姿を現す、というときにヤツが現れた。
さっきの気味の悪い巨人と似たようなおぞましいその姿に、身体が硬直する。
私のすぐ下で、母親の顔が真っ青に色を変えるのが見えた。

「逃げて…!この娘を連れて逃げてください!!」

必死に懇願する母親の瞳には涙が溢れていた。
少し前までは、諦めていた命。せめて娘だけでも助かればと願っていたはずの彼女は、そこに現れた私に助けられて、もしかしたら娘だけではなく自分も助かるかもしれないと希望を持ってしまった。
だからこそ、今の絶望は計り知れない。
母親を泣かせているのは、巨人か。
それとも、助けると約束も出来ないのに希望を抱かせてしまった私か。
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