• テキストサイズ

【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第2章 ◇第一話◇悪夢の再来【調査兵団入団編】


母親が泣いているからなのか、それとも、母親との永遠の別離を理解したのか、ただ巨人が怖いからか。さっきまでは蚊の鳴くような声で泣いていた少女が、これでもかというほど大声で泣きだした。
その声に気づいたらしい巨人がこちらを見た。
さっきの巨人はまっしぐらに走ってきたが、この巨人は動きが遅い。
きっと、運がいいんだ。走って逃げれば助かるかもしれない。
母親は諦めよう―。娘だけ連れて逃げよう―。
頭の中で自分の声が聞こえる。
逃げろと必死に叫ぶ自分の声は聞こえるのに、恐怖で身体が動かない。

(助けてっ。誰か、助けて…!!)

声を上げて叫びたいのに、声すらも出ない。
喉が渇いて、ヒューヒューと空気が通る音だけが漏れる。

「ママぁ~っ!ママぁ~!!!」

少女の声にハッとしたときには、瓦礫の下に身体の半分が埋もれていたはずの母親が、頭上にいた。
大きな手が母親の身体を、文字通り、握りしめている。
少女の名前を呼びながら伸ばされる母親の白く細い腕が、ヒルラのそれと重なる。

「ここから動かないでね!」

私は少女に声をかけて走り出した。
事務所のあった辺りを探すと、メンテナンスしたばかりの立体起動装置と超硬質スチールをすぐに見つけることが出来た。
技術士が嬉々として語ってくれたおかげで、装備の仕方や使い方は知っている。
この立体起動装置と超硬質スチールがなければ、巨人を倒すことは出来ないが、今ここにその扱いに慣れている兵士はいない。
それなら、使ったことはなくても使い方は知っている私がやるしかない。
いや、使えなくてもやるしかない。
やらないと死ぬんだ。
逃げたところで、あんな大きな巨人にはすぐに追いつかれるに決まっている。
どうせ死ぬなら、それなら私は―。

「誰が…。誰が…!!可愛い子供を残して死にたい親がいるっていうんだ!」

替刃をセットして立体起動装置と超硬質スチールを装備して、私は声を上げる。
自分でも驚くほどの大きな声は、なんとしてでも生きるという自分への宣言だった。
/ 1058ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp