【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第16章 ◇第十五話◇入団【調査兵団入団編】
馬小屋のある方から歩いてきたのは、リヴァイ兵長だ。
確か、調査兵団の兵舎で執務業務に多忙なエルヴィン団長に代わり、昨日からウォール・シーナの内地の憲兵団との会議に参加していると聞いていた。
こんな夜遅くに帰ってきたのだろうか。
リヴァイ兵長は、窓の外を見ている私に気づくと、こちらまでやってきて窓を叩いた。
開けろ、ということらしい。
「こんばんは。今、シーナからお帰りですか?」
「あぁ。」
窓を開けて、私から声をかける。
自分から窓を叩いたくせに、リヴァイ兵長は壁に寄り掛かり、私に背中を向けたまま、愛想なく返事をした。
「おかえりなさい。遅くまでお疲れ様です。」
「あぁ。」
また、愛想のない返事が返ってくる。
一体、何がしたくて窓を叩いたのかわからない。
沈黙が続くのが苦手な私は、なんとか話しかけようと考えるけれど、リヴァイ兵長との話題なんて持っていない。
だが、意外にもリヴァイ兵長から話題を振ってくれた。
思ってもいない、でも、知りたかった情報を―。
「お前の家族は、元気にやっている。」
「え?」
「エルヴィンが懇意にしてる貴族が良くしてる。
何不自由なく生活できていた。
だからー、心配するな。」
「わざわざ、見に行ってきてくれたんですか?」
「バカ言え、たまたま近くを通りがかったら、見えただけだ。」
「そうですか…。ありがとう、ございます…。」
ホッとして、嬉しくて、寂しくなって、会いたくなって、よくわからない感情が溢れて、なんとか振り絞って伝えた私の声は、震えていた。
近くを通ったら見えただけだとかなんとか、リヴァイ兵長は言っていたけれど、どっちでもいい。
調査兵団の兵舎にやってきてからずっと、家族のことが気になっていた。
内地は安全だけれど、今まで全く違う環境で生きてきた貴族とうまくやれるのかと、不安は絶えなかった。
そんな私の気持ちに、リヴァイ兵長は気づいてくれていたのだろうか。
リヴァイ兵長の優しさが、ただただ嬉しかった。