【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第15章 ◇第十四話◇入団テスト【調査兵団入団編】
「!!」
リヴァイ兵長が私の名前を叫ぶ声がした。
でも、その姿は見えなかった。
だって、私に見えたのは、おぞましい笑顔を浮かべる巨人と今まさに私を捕まえようとしている大きな手だったから―。
あっという間に大きな手で握られた私は、おぞましい笑顔と対峙して初めて、自分も巨人に食べられる側の人間だということを理解した。
(いや…、いやだ…。死にたくない…。怖い。)
心の中では必死にそう言っているのに、恐怖で声にならない。
こんな事態も想定して、ナナバさんとゲルガーさんが逃げ方を教えてくれたはずだ。
どんな技術よりも懇切丁寧に、時間をかけて、私は教えてもらったはずだった。
でも、頭が真っ白になって思い出せない。
そもそも、身体が硬直して動かない。
「ソイツを放しやがれ、クソ野郎。」
巨人のおぞましい顔の後ろにリヴァイ兵長の姿が飛び上がってきたのが見えた。
そして、あっという間にうなじを削がれて絶命した巨人が私を放した。
立体起動装置でどこかへ飛び移らないとこのままだと地面に叩きつけられる。
頭の中ではそれを理解していても、恐怖に支配された心と身体は重力のされるがまま落下していく。
そんな私の役立たずな身体をリヴァイ兵長が受け止めてくれた。
そして、そのまま止まることなく飛び続けて、トロスト区の壁上へと降り立った。
地獄の入口を見て絶望する私に、リヴァイ兵長は何も言わない。
立ち上がることもままならない私を、リヴァイ兵長はただただ包み込んでくれていた。
そして、私は、リヴァイ兵長の身体に必死にしがみついていた。ギュッとギュッと抱きしめた。
リヴァイ兵長の腕の温もり。それだけが、その時の私にとって唯一証明できる“生”だったから。