【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第115章 ◇第百十四話◇水を得たいのに海を知らない魚【女型の巨人編】
「昔、祖父が読んでいた本を見つけたんです。
それで、思わず夢中になってしまって…。」
半分ほど読み終えている本を見下ろすアルミンの横顔に影を見た。
この世界に住むほとんどすべての人間が持っている悲しい過去が、彼にもあるのかもしれない。
「どんな本なの?」
「壁の外の世界についてです。
きっと、ここが調査兵団の図書室だからこんなものがあるんでしょうね。
まぁそれでも…、隠すように置いてあったのを見つけたんですけどね。」
アルミンは少し躊躇いがちに言って、私にその本を渡してくれた。
開いているページを軽く読んでみて、あぁ確かにと納得する。
この壁に囲まれた世界は、なぜか壁の外について知りたがるのを良しとしない風習がある。
調査兵団に対する世間の目が冷たいのは、そういう理由もあるのだろう。
確かに、外の世界には危険がいっぱいだ。何と言っても、巨人がいる。
でも、澄んだ空気と広い大地。そして、自由ー。
素敵なものもたくさんあると思うのに。
「これ…。」
パラパラとページをめくっていた私は、薄い青色の挿絵を見つけた。
それは一見すると湖のようだったけれど、私にはその絵の風景に見覚えがあった。
何度か夢に見たことがある、地平線にずっと続く大きな湖。
この挿絵は、あの夢の風景に違いないと直感した。
「それは海ですよ。」
アルミンが本を覗き込み、教えてくれる。
「海?」
「はい、商人が一生かけても取り尽くせないほどの巨大な塩の湖なんです。」
「塩の湖…。」
「はい!他にも、炎の水や氷の大地、砂の雪原とかー。」
まるで水を得た魚のように、アルミンは瞳をキラキラと輝かせて壁の外の世界というのを話してくれた。
その話を聞きながら、私は何度か見たことのある夢のことをずっと考えていた。
あれは、夢だ。
でも、どこかすごくリアルで、私はあの『海』というものを、夢に見るずっと前から知っていたような気がする。
(じゃあ、あの人は誰?)
それは、きっとただの夢なのに。
夢の中でいつも私の隣にいた誰かのことを思い出したくなった。
会ったこともない人のはずなのに、ただの夢なのに。
触れた手の感触とか、抱きしめてくれる腕の温もりとか、どれもすごく懐かしくてー。
「~、何をサボってるのかな~~~?」
「あ…!」
ハンジさんに見つかった。