【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第112章 ◇第百十一話◇2人だけの幸せな物語をこれからも【恋の行方編】
白い霧と雨の中、震える脚で私は走り続けた。
独りでー。
いや、きっと、私は、1人じゃなかったー。
だから、あの声に導かれて走ったから、教会に辿り着くまで、一度だって巨人に出くわすことはなかったのだと信じている。
あの女の子が言っていたアニキとは、誰のことだったのだろうー。
「アニキ…。」
不意に、ポツリと口から零れた。
その途端、隣で報告書を見ていたはずのリヴァイ兵長が、驚きを隠せない表情で私を見た。
「今、何と言った。」
「え?」
「…いや、何でもねぇ。熱は?」
「下がりました。」
私の返事も無視して、リヴァイ兵長は私の額に手を乗せて熱を確認し始める。
そして、すぐに眉間に皴を寄せた。
熱は下がってないらしい。
「まだ寝てろ。」
「…一緒に。」
リヴァイ兵長の腕に触れて、お願いをする。
だって、1人でベッドの中で眠るのは寂しいし、つまらないし、それにー。
もっともっとリヴァイ兵長を感じたい。
一緒に生きていると、生きて帰ってこれたのだと、感じたいー。
「仕方ねぇな。」
リヴァイ兵長はため息交じりに言ったけれど、その声色はとても優しい。
報告書をベッド横の棚に置いて、毛布の中に潜り込むとすぐに私を抱きしめた。
「ねぇ、リヴァイ兵長。」
「ん?」
「いつか私が死んで、向こうの世界に行ったら、
会ってお礼を言いたい人が、いるんです。」
「…そうか。俺もだ。」
「会えますかね?」
「会えるさ。」
「そうですね、会えますよね、きっと。」
リヴァイ兵長の肩に顔を埋める。