【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第107章 ◇第百六話◇悪魔の駒【恋の行方編】
(雨…?)
雨が降り始めた。まだ小雨だが、空を次第に分厚い雲が覆い始めている。これから本降りになりそうだ。
も同じようなことを思ったのか、空を見上げようとしてすぐ近くにいるジーニー達に気が付いてしまった。
「あれ?どうしたの?何かあった?」
の瞳が、完全にジーニー達を捉えてしまった。
これではこっそり馬から落とすという作戦は使えない。
でも、この際もうどっちでもいい。
どうせ、ここでを馬から落としてしまえば、二度と壁内には戻ってこない。
そうなれば、自分達がを殺そうとしたことがバレることもないのだからー。
「えぇ、そうなの。」
「どうしたの?」
「アンタにさ、死んでもらおうと思ってね。」
ジーニーが鞘から超硬質スチールを引き抜くのと、が焦ったように暴れ馬の名前を叫んだのは、ほぼ同時だったはずだ。
暴れ馬にも主人を守ろうとする心があったのか、前脚を上げて攻撃をしてきた。
確かに、超硬質スチールの刃の長さを考えれば、避けるよりはその方が主人を守れる確率は高いだろう。
でもその代わり、自分の前脚は超硬質スチールの刃で切りつけられることになるけれどー。
さすが、身体能力の高い馬だけあって、肉をえぐられる前に避けたから切られるだけで済んだが、それでも怪我は怪我だ。
「キャーッ!」
痛みで悲鳴のような声を上げて暴れたテュランから、が落馬した。
自分の手で殺してしまおうと思ったが、まぁ、結局は作戦通りになっただけだ。
ジーニーとその取りまきの馬が、壁外の草原のど真ん中で馬に振り落とされた恋敵を取り囲む。
落ちたときに頭でも打ったのか、は意識がないようで起き上がる様子はない。
『お嬢様方に最後のお願いがございます。
ルーカス様は、様と二度とお会いして悲しいことを思い出したくないのです。
次回の壁外任務から彼女が帰って来なければ一番いいのですが…。
そこで、お嬢様方に、ルーカス様が心穏やかに生活できるように助けてあげて欲しいのです。』
どうやって非番の日を調べてきたのか、外に出たところで待ち構えていたのは、ルーカスの執事だった。
殺せーとは言わないのは、さすがあの執事だと思った。