【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第106章 ◇第百五話◇悪い予感【恋の行方編】
「なめた掃除をしてんじゃねぇ。」
扉の向こうから、リヴァイの不機嫌極まりない声が聞こえてくる。
その後ろからエレンの焦った返事が追いかける。
「あっちはまだ掃除してんの?」
「はい…。なかなか、家具の移動まで進まないみたいで…。」
「今日の夜、リヴァイはどこで寝る気なんだ…。」
窓の向こうでは、空が赤く色づき始めている。
このペースじゃ、部屋の移動は今日中に終われない。
元々のリヴァイの部屋にあった家具は、既にエルド達が廊下まで運び出している。
このまま掃除だけで1日が終わってしまったら、リヴァイは廊下で寝る気だろうか。
「でも、リヴァイ兵長はが帰ってくるまでは
部屋を移動したくないと言うんだと思ってました。」
疲れたのかソファに腰をおろし、モブリットが隣の部屋と繋がる扉へ目をやる。
「私もだよ。信じてんだね。絶対には帰ってくるって。」
本当はもしかしたら、願掛けみたいなものかもしれないーそうも思っている。
でも、リヴァイが神様にお願いだなんて似合わないし、しそうもない。
きっと、本当に、信じているのだろう。
絶対に生きて帰ってくるーと言ってくれたのことを、必死に信じて、待っているのだ。
リヴァイにとっての初めての壁外調査。
そこで失った生意気な新兵の顔を、ハンジは今も覚えている。
世界の不条理と残酷さを思い知った、リヴァイの顔もー。
ようやく、リヴァイの世界に美しい色が加わったのだ。
もう誰にも、奪われてはいけない。
それこそ、絶対にー。
「でも、不思議ですよね。
俺もは絶対に帰ってくると信じてるんです。
絶対なんて、この世界にはないはずなのにー。」
モブリットが見つめる扉の向こうからは、なかなか掃除を終わらせてもらえないリヴァイ班の悲鳴が聞こえ続けていた。