【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第2章 ◇第一話◇悪夢の再来【調査兵団入団編】
我先にと内門へと逃げ込む人間達の流れに押されながら、中へ入ろうとして、私は左手薬指にあったはずの彼への愛の証がなくなっていることに気が付いた。
(うそ…!いつなくしたの…!?)
いつまであったのか分からない。
少なくとも事務所に大きな岩が降ってくる直前まではあったはずだ。
それからはただひたすらに内門を目指して走ってきたから、落とすなら事務所からこの内門までの道のりのどこか。もしくは、岩が落ちてきたときの爆風で身体が吹き飛ばされたときに、一緒に指輪も外れてしまったのかもしれない。
「あ、おい!#NANE2#!どこに行くんだ!!」
人の流れに逆らって走り出した私に気づいた先輩が驚いて叫んだ声が聞こえた。
でも、振り返って説明する余裕も暇もない。
それに、落とした指輪を探しに行くと言えば呆れられるだけだろうし、指輪のために命を懸けようとするなんて、一番信じられないのは、誰でもなく自分自身だった。
「ない…っ、ない…っ。」
走りながら地面をくまなく探すが、指輪は見つからない。
大きなダイヤがついているあの指輪は、転がっていればすぐに見つけられるはずだ。
でも、事務所から内門までの道のりで見つからないとすれば、身体が飛ばされたときに指輪が外れた可能性が高い。
あの事務所に行くしかないのか―。
ヒルラの亡骸を思い出して、思わず足を止めそうになったが、それでも私は事務所へと走った。
ようやくたどり着いた事務所だったはずのその場所は、少し前の状態とあまり変わっていなかった。
巨人はまだここには来ていないということかもしれないし、駐屯兵団施設がすぐ近くにあるから、このそばの巨人は駐屯兵達が一掃してくれたのかもしれない。
恐怖はもちろんあるが、それならやりやすい、と思い直して、指輪を探すのに集中する。
ヒルラの腕を押しつぶす岩も、ヒルラも、必死に見ないようにした。そして、すぐに指輪を見つけることが出来た。
デスクだったと思われる瓦礫のそばにあったから、やっぱり、ここで指輪を落としてしまっていたようだ。
もう落とさないように、胸ポケットの中へと入れた。チャックがついているから、ここを間違って開けてしまうことがなければ、もう二度となくならないはずだ。
「たす、けてく、ださい・・・。」
よし、逃げよう―。
地面を蹴ろうとしたそのとき、どこからか小さな声が聞こえてきた。