【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第2章 ◇第一話◇悪夢の再来【調査兵団入団編】
「やっと内門まで来たってのに、何やってんだよ…っ。」
焦燥した先輩の声は、そこにいるみんなの気持ちの代弁に違いなかった。
巨人が壁を壊したと上司が叫んだ通りの事態に陥っているトロスト区では、壁の破壊による落石や人間を食らう巨人からなんとか免れた住人達が内門へと集まってきていた。
本来ならこのまま開かれた内門からウォール・ローゼ内へ入って逃げれば、ひとまずは安心できるはずだった。
だが、欲をかいた商会のボスが大きな荷物を載せた荷台を内門に通そうとしているのだ。
欲をかきすぎた彼の荷台は内門の幅よりも大きく、中に入ることが出来ず、荷台を諦めろと怒る住人との喧嘩が始まっていた。
また巨人に人類が滅ぼされるかもしれないというこのときに、人間同士が争っているなんて、どうしようもない。
「巨人だ!すぐそこまで来てる!」
誰かが叫んだ。
慌てて街の方を振り返れば、見たこともないような大きな生き物がこちらへ向かって走ってきている。
気味の悪い走り方とその顔は、この世のものとは思えないほどおぞましい。
でも、確かにヤツは存在していて、明らかに私達を襲おうとしている。
「今すぐ荷台を引け!」
「押せ!押し込め!」
「死にたくねぇやつは荷台を押せ!!」
こんなときにもやっぱりバラバラの人間達は、焦りと恐怖に襲われながら、荷台を押したり、引いたりしている。
そして、すぐそこまで巨人が来ている、助けてくれと大声で騒ぎ立てるしかできない私と先輩もまた、無力な人間の1人に過ぎなかった。
だから、颯爽と現れ、巨人を一撃で倒し、照会のボスさえも黙らせた若い女の訓練兵が、眩しく見えたのは必然だったと思う。
その時初めて、立体起動装置と超硬質スチールがカッコ良く見えた。